新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、テレワークや時差通勤が広がり、全国の小中高などが臨時休校となった。自宅にいる時間が増えるといった生活の変化が消費行動に影響を及ぼしている。食品や日用品の調達方法もその一つ。店に行かず、家で受け取る宅配の需要が伸びている。需要を取り込んでいるのはネットスーパーではなく、各地の生活協同組合だ。

「外出を控え、自宅にいる日数が増えているため宅配のニーズが高まっている」。こう指摘するのは、兵庫県全域と大阪府、京都府の一部で事業を手掛ける生活協同組合コープこうべ(神戸市)の担当者だ。2月末以降、組合加入の新規申し込みが前年同期の1.2倍のペースという。関東の1都7県をカバーするコープデリ生活協同組合連合会(さいたま市)も、新規加入に関する資料の請求数が、3月2~6日の週はその前の週に比べ16%増えた。
全国各地の生協は共同購入事業の流れをくみ、数十年前から宅配を手掛けている。新型コロナウイルスの影響で宅配の需要が増えたことで、生協はその強みを存分に発揮している。
コープさっぽろは売り上げが1.4倍に
「前から加入していたが、しばらく使っていなかった人が利用を再開している」。こう分析するのは、関東を中心に1都11県で宅配を手掛けるパルシステム生活協同組合連合会(東京・新宿)だ。同連合会では、3月第1週(2~6日)の利用者が前年比7%増えた。
その前週(2月24~28日)は4%増、前々週(2月17~21日)は2%増だった。感染拡大の深刻化と臨時休校などによって徐々に増えている形だ。新規に組合員になった人もいるが、休止していた利用を再開した人が多いという。
利用者だけでなく注文数も増えている。3月第1週は前年同期比21%の伸び。宅配事業は消費増税があった2019年10月以降、利用の伸びが鈍くなり、「前年実績を割り込む週もあった」(パルシステム連合会)。それだけに3月第1週の数字は「驚きの増え方」(同)という。コメや飲料のほか、冷凍食品、酒などの注文が多いという。
2月28日に緊急事態宣言が出された北海道を基盤とする生活協同組合コープさっぽろ(札幌市)も、宅配の注文数が伸びている。「ここ1~2週間で供給(売り上げ)は前年比1.4倍、客単価は1.3倍」(コープさっぽろ担当者)。宅配を利用するには組合員になる必要があり、新規申し込みも「今までなかった地域から問い合わせがきている」(同)という。
コープさっぽろは宅配だけでなく、道内でスーパーを107店運営している。「客足が開店直後や午前中に集中するなど変化はあるが、意外と客数に変化はない」(コープさっぽろ)。店舗と宅配事業は運営が分かれているため、宅配が増えても対応できる。
このように宅配を事業の中心に据えていることが生協の強みと言える。前出のパルシステムは宅配専業だ。注文が急増し、従来の物流センターだけではメーカーから商品を受け取る作業をさばききれなくなったが、今春稼働予定の新センターの敷地や、過去に使っていた物件の一部を使うことで対応している。「物量が増えるだけなので、人海戦術も使いながら対応できている」(パルシステム連合会)。配達の1週間前に注文するシステムのため、商品を手配する時間にも余裕がある。
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