2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻を受けて、ロシアでの事業停止を決めるグローバル企業が相次いでいる。「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは営業継続を模索してきたが、3月10日に一時停止を決定。世界の政治問題とどう向き合うか。あらゆる企業が正解のない難題に巻き込まれている。

 「ロシアにおいても、私たちの使命の一環として、これまでユニクロの日常着を一般の人々に提供してきました」。3月10日にロシア事業の一時停止を決めたファーストリテイリングの声明には、営業を継続できない悔しさがにじんでいた。

 ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから、アパレルや外食などのグローバル企業が次々にロシア事業の停止を決めている。「ウクライナでの悲劇的な事態を深く憂慮している」。3月2日にこうした声明を出してロシアでの販売の一時的な中止を決めたのは、スウェーデンのアパレル大手へネス・アンド・マウリッツ(H&M)。「ZARA」などのブランドを展開するスペインのインディテックスやスポーツ用品のドイツ・アディダスも続いた。

 その分、打撃も受ける。アディダスは9日、ロシアでの販売停止によって、2022年12月期の売上高が最大で2億5000万ユーロ(約320億円)減るリスクがあると発表した。売上高成長の約1%に相当する規模だという。

「残念だ」と駐日ウクライナ大使

 そうした中、ロシア国内でユニクロを50店舗展開するファストリは、営業継続を模索してきた。日本経済新聞は7日、ファストリの柳井正会長兼社長がウクライナ侵攻について「戦争は絶対にいけない。あらゆる国が反対すべきだ」とコメントし、その上で「衣服は生活の必需品。ロシアの人々も同様に生活する権利がある」と語ったと報じた。

ユニクロはロシアに50店舗展開しており、営業継続を模索してきた
ユニクロはロシアに50店舗展開しており、営業継続を模索してきた

 ロシアの一般市民の必需品を提供するとの名目で営業を続ける一方で、ウクライナや周辺地域で人道支援をする国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)への1000万ドル(約11億5000万円)の寄付を決めた。さらにUNHCRを通じ、ポーランドなどの近隣国に逃れた難民にユニクロの毛布やインナーなど衣料品約20万点を提供する。

 しかし、ユニクロの営業継続についてセルギー・コルスンスキー駐日ウクライナ大使が反応。ツイッターに「残念だ」と書き込むなど、ファストリの判断は波紋を呼んだ。SNS(交流サイト)にはユニクロを批判する書き込みも相次いだ。結局、10日になって「現在の紛争を取り巻く状況の変化や営業を継続する上でのさまざまな困難」(同社の声明文)を理由にロシア事業の停止を決めた。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1246文字 / 全文2326文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

特集、人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

ウェビナー【日経ビジネスLIVE】にも参加し放題

日経ビジネス最新号、10年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「小売りの未来」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。