セブン&アイ・ホールディングス(HD)が、傘下のそごう・西武を米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループに売却する計画に「待った」の声がかかった。そごう・西武の従業員と元従業員の2人が2月27日、株式売却の差し止めを求める仮処分を東京地方裁判所に申し立てたのだ。株式を譲渡すれば「回復することができない損害」が生じると訴えている。どのような主張なのか。

 セブン&アイHDの発表によると、そごう・西武の企業価値の基準額を2500億円としている。しかし、そごう・西武が保有する不動産のうち、西武池袋本店のほか8カ所の鑑定評価額は3800億円に上る。不動産の価値だけでも譲渡価格の基準となる2500億円を1300億円以上上回ることになる――。

 セブン&アイHDが百貨店子会社を米投資ファンドへ売却する計画を巡り、そごう・西武の従業員と元従業員の2人が「著しい廉価でそごう・西武の株式譲渡を予定しており、セブン&アイHDに回復することができない財産的損害が生じる恐れがある」として、売却差し止めを求める仮処分を東京地裁に申し立てた。2人は半年以上前からセブン&アイHDの株式を一定数保有しているという。

 訴状によると、同社代表取締役の井阪隆一社長と後藤克弘副社長が、「善良な管理者の注意」で職務を遂行する義務である善管注意義務を果たしていないと主張。このまま株式譲渡を行えば売却額が企業価値を下回り、セブン&アイHD側には財産的な損害のほか、企業の信用低下(レピュテーションリスク)といった非財産的な損害も生じると訴えている。

 原告代理人の河合弘之弁護士は今回の売却計画を「不当に廉価な価格での譲渡となる」と指摘する。

(写真=日刊工業新聞/共同通信イメージズ)
(写真=日刊工業新聞/共同通信イメージズ)

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1454文字 / 全文2178文字

日経ビジネス電子版有料会員なら

人気コラム、特集…すべての記事が読み放題

ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題

バックナンバー11年分が読み放題

この記事はシリーズ「小売りの未来」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。