感染拡大が続く新型コロナウイルス。テレワークや時差通勤の広がりに加え、全国の小中高などが臨時休校となったことで、多くの人の生活ががらりと変わり、消費行動にも変化が出ている。マスクや消毒剤以外でも特需が起きている。
「見守り」用カメラが7割増、総復習ドリルは数倍
臨時休校で知育系のカードゲームなどが売れている(ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba)
「2月29日と3月1日の2日間の売り上げが、その前の1週間の1.7倍だった」。ビックカメラでは、2月27日に安倍晋三首相が小中高の休校を要請して以降、ネットワークカメラが急激に売れた。インターネットにつないで室内に設置すれば、外出先から家の中の様子が分かる機器で「留守番する子供の見守り向けではないか」(ビックカメラ)。
休校により、時間を持て余すことになりそうな子ども向けの製品も売れている。ヨドバシカメラでは、百人一首やかるた、パズルなどのカードゲームの売り上げが、3月1日までの1週間で前年同期の1.3倍になった。「知育的な要素があるゲームを親が買っている」(ヨドバシカメラ)。人生ゲームや海外のボードゲームなどの売り上げも1.5倍だという。
学習関連の書籍も好調だ。丸善ジュンク堂書店では「『学習参考書』と呼ばれるジャンルがよく売れている。中でも小学校低学年向けの参考書、とくに総復習ドリル系の商品が前週比で数倍の売れ行き」という。児童書ジャンルでは『ざんねんないきもの事典』シリーズのような楽しみながら知識を得られるものを手に取る人が多い。子ども向け以外でも、国内で新型コロナウイルスの感染者が出て以降、「カミュの『ペスト』や石弘之の『感染症の世界史』が売れている」(丸善ジュンク堂書店)。
オンライン英会話の申し込みが増加
テレワーク関連の商品も売り上げが急増している。パソコンに接続するウェブカメラとヘッドセットマイクは、ビックカメラで2月26~29日の売り上げが前年同期比2倍以上。個人による購入が多いが「複数の社員分を買う法人需要もある」という。ヨドバシカメラは2月、ウェブカメラとヘッドセットの売り上げが前年同月比で5倍に、ケーズデンキもウェブカメラの売り上げが1.5倍となった。
小中高の臨時休校により、オンラインによる様々なサービスはさらに伸びそうだ。オンライン英会話大手のレアジョブは、2月28日から3月1日までの3日間で、小中高校生向けのサービスに無料会員登録した人の数が、その前週末の3日間に比べて4.2倍に増えた。休校が始まった今週に入り、「幼少向けも伸びており、有料会員登録者数が3月3~4日の2日間だけで月間の平均純増数の7割に達した」(レアジョブ)。教室で勉強できない分、自宅で学ぶ方法を模索する人が増えている。
買いだめ向け? 冷凍庫の販売が急増
意外なところでは、「冷凍庫が売れている」(ケーズデンキ)。2月の売り上げは前年同月比1.5倍。例年は6~8月によく売れる商品で、2月は「買い替え程度」(同社)だという。冷凍食品などをまとめ買いして保存するため、季節外れの販売増になったとみられる。実際、食品スーパー大手のライフコーポレーションは2月最終週の冷凍食品の売り上げが「通常の1.5~2倍になった」。イトーヨーカ堂も2月最終週は冷凍食品の売り上げが1.5倍に。「休校で昼食向けに売れているようだ」(セブン&アイ・ホールディングス)という。
ライフの2月の既存店売上高は前年同月比8.6%増だった。うるう年による増収効果を除いても6%程度の増収だ。「コメやカップ麺、缶詰などが売れた」(ライフ)と、非常時モードでストック品を増やす傾向がうかがえる。コメ卸の神明も「ここ2週間でコメもパックご飯も売れている」としている。ただ、在庫は潤沢にあるため、慌てて買いだめをする必要はない。
ケーズでは体温計も通常の3倍の売れ行き。居酒屋の「土風炉」や「魚魯魚魯」などを運営するラムラ(東京・中央)が来店客を検温する方針を打ち出すなど、家庭以外でも需要が高まっている。
非常時で一時的に売り上げが伸びているものもあるが、新型コロナウイルス対策を進める過程でテレワークやオンラインを使った学習などはいっそう社会に定着していく可能性がある。これまでとは異なる商品やサービスがヒットしそうだ。
連載「小売りの未来」では、庄司容子記者が消費の多様化やデジタル化の進展で岐路に立つ小売業の最新事情を追います。連載をフォローして、最新記事をお読みください。
この記事はシリーズ「小売りの未来」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?