バレンタイン商戦に変化が起きている。需要を支えたバラマキの「義理チョコ」は、精神的な負担やテレワークの普及で激減。女性の8割が「参加したくない」とのアンケート結果もある。一方でステイホームやおひとりさま需要で、家族や恋人への愛情表現や、自分自身へのねぎらい用に購入する消費者がじわりと増えている。新型コロナウイルス禍を経た生活の変化や、ジェンダーレスの流れを受けて「女性から男性へ」の風潮が変わりつつある。

「性別に関係なく、メイクアップしてもよい」。そう考える若者が増えている。資生堂の調査では10代、20代で7割以上の男性がそう考えているという。世間は性別による社会的な差異をなくしていくジェンダーレス時代に移りつつある。「女性から男性にチョコレートを贈る」というかつてのバレンタイン商戦も変化を迫られている。
資生堂ではバレンタインデーに合わせて、チョコレートをモチーフにしたメイクを提案するマーケティングを仕掛けた。女性のみならず、男性向けにアイメイクやチーク、リップなどを紹介し、10代から20代の男性層を開拓する戦略だ。資生堂担当者は「カップルでお互いのメイクをSNS(交流サイト)に投稿する人も増えている。バレンタインを機会に男性もメイクをおしゃれの1つとして楽しんでもらえれば」と話す。

実際、バレンタイン需要の中核を担った「義理チョコ」のバラマキ需要は過去のものとなりつつある。
「女性の8割以上は、職場で義理チョコを配るバレンタインのイベントに参加したくない」――。調査会社のインテージ(東京・千代田)は2月8日、15~79歳の男女約2600人に向けたインターネット調査でそんな結果を示した。ポイントは男性側も6割が義理チョコをもらっても「うれしくない」と答えた点だ。担当者は「女性から渡すという認識自体が薄れている。大切な人への愛情や感謝の気持ちを示すイベントに変わってきている」と説明する。
調査によれば義理チョコを渡す女性は全体の1割に満たない。今年のバレンタインデーに女性が個人で用意するチョコやお菓子の渡し先は、「家族」が41.8%、「自分」が13.2%、「友人」が11.4%と続き、「義理」は8.2%だった。
過熱商戦に見直す動き
もともとバレンタインデーは、ローマ時代に殉教した聖バレンタインの命日が由来とされる。欧米では恋人同士がプレゼントや手紙などを交換するが、日本ではチョコレート需要を喚起するイベントとして1970年代から「女性が男性に好意を示す日」として定着。さらに80~90年代には学校や職場で好きでもない男性に”気配り”として渡す「義理チョコ」文化も広まった。
かつては受け取った「義理チョコ」の数を職場で男性が自慢しあうような光景もあったが、近年はジェンダー観の変化もあり、そうした慣習を見直す動きがある。

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