「セブン&アイ、そごう・西武を売却へ」。2022年1月末、日本経済新聞が報じたニュースが流通業界を駆け巡った。当のセブン&アイ・ホールディングス(HD)関係者も「もともと構造改革の一環として事業ポートフォリオの見直しを考えてきた」と否定しない。セブン&アイHDはどこに行こうとしているのか。
■掲載予定 ※内容は予告なく変更する場合があります
(1)セブン&アイ、覚悟のコンビニ回帰 脱・流通コングロマリット(今回)
(2)井阪隆一社長インタビュー「流通業は変わり続けなければ」
(3)成長の原動力は世界へ 「日本流」だけじゃない
(4)ネットで変貌する店舗 その先に見る勝ち筋
(5)鈴木敏文名誉顧問インタビュー「自ら歴史を創り出せ」

「セブン&アイHDの課題は事業ポートフォリオ改革が遅れている点にあった」。こう話すのは大和証券の津田和徳アナリスト。セブン&アイHDが百貨店事業会社のそごう・西武を売却する方針について、業界関係者の間では「既定路線」との見方が強い。
そごう・西武の売却報道から遡ること約1週間。セブン&アイHDは取締役会に宛てた1通の書簡を受け取っていた。送信したのは、「物言う株主」として知られる米バリューアクト・キャピタルだ。
文面には、セブン&アイHD経営陣を批判する厳しい言葉が並んでいた。「貴社は、戦略的な集中にかけており、そのポテンシャルに比して大幅にアンダーパフォームしています」「当社の考え及び協力の申し出に対する貴社経営陣の回答は、満足のいくものではありませんでした」
日本企業ではオリンパスやJSRなどの株式を保有して社外取締役を送り込み、経営の改善を求めてきたバリューアクト。21年春にセブン&アイHD株を4.4%保有していることを発表し、経営陣に対してコンビニエンスストア「セブン-イレブン」事業への集中を求めてきた。セブン&アイHDの井阪隆一社長は「積極的かつ建設的に対話してきた」と話すものの、バリューアクトは歩み寄りがないことにしびれを切らしたようだ。
書簡では、社外取締役が株主から直接意見を聞く機会を持つこと、そして社外取締役のみで構成する「戦略検討委員会」を組成することを要求。その書簡を広く公開する異例の手法でセブン&アイHD経営陣に決断を迫った。
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