費用対効果は、お客さまが重要視しているポイントにもかかわらず、費用対効果に納得いかなかったことは、営業に対して隠されがちなのです。お客さまにとっては、費用対効果について抱いた疑問を営業担当者に伝えることが、面倒に感じられるのでしょう。

 こういった建前と本音に振り回されずに、お客さまの心の内をどうやって捉えればいいのでしょうか。そして、価格や予算の壁を突破している営業は、いったいどうやって提案をしているのでしょうか。

 皆さんにとって身近な、引っ越しの物件探しを例に考えてみましょう。

「当初の予算より高い物件に引っ越す」のはどんなときか

 たとえば、皆さんが、引っ越しをしようとして物件を探しに、街のなかにある不動産屋さんに入ったとします。

 最初は、「家賃12万円を超えないぐらいで、A駅やB駅から徒歩7分以内のエリアにある物件がいいな。間取りは1DKで、築年数は10年以内が希望かなあ……」のように、担当の方に伝えるでしょう。

 この希望条件を分解すると、このようなイメージです。

  • ●家賃の予算「12万円を超えない」
  • ●エリアやアクセス「A駅やB駅から徒歩7分以内」
  • ●間取りや広さ「1DK」
  • ●築年数「10年以内」

 この条件で不動産屋さんは物件をリストアップして提示してこられますが、もちろん、条件が良くてみんなが住みたがるような物件は成約済みであることが多いでしょう。

 当初の提示条件に基づいてリストアップされた物件を順番に内見してみるが、どうもしっくりこない……。たとえば、こんなとき、「この物件は、家賃のご予算を少しオーバーしているのですが、スーパーやクリーニング屋さんが近くにあって便利ですし、大きな道路から少し離れているので、静かで落ち着いているんですよ。あと、新築なのできれいですから、住んでみると快適なのでは」といった物件を提示されるとします。

 そうすると、

  • ●生活の利便性「スーパーやクリーニング屋さんが近い」
  • ●近隣の雰囲気「静かで落ち着いている」

――こんなメリットが浮上してきます。

 さらに、こんなポイントも追加されます。

  • ●築年数「新築できれい」

 もし皆さんがこの物件を気に入ってきた場合、心の中では、このように考えたりしませんか。

 「確かに家賃は少しオーバーするかもしれないが、その分、生活の利便性や近隣の雰囲気はいい感じだ。そして、新築できれいなのは、確かに、気持ちもいいだろう」

 結果として、当初の家賃をオーバーした物件であっても、引っ越しを決めてしまうかもしれませんね。要するに、「価格の絶対的な金額ではなく、費用対効果で考えるモードになった」ということです。

 では、これを皆さんの営業活動に当てはめてみるとどうなるか、考えてみましょう。

費用対効果で考えていただく「要件整理に基づく問いかけ」とは

 たとえば、皆さんが会社のホームページを制作する会社に勤める営業担当者だったとします。お客さまは、ホームページ制作を依頼したい会社や個人、ということになります。
お客さまがこんな依頼をされてきたらどうでしょうか。

 「うちの会社のホームページをリニューアルしたいと思っています。とにかくできる限り安くお願いしたいです。あ、あと、デザインは見栄えを良くしてもらって、なるべくスピード対応でやって頂けるとうれしいです。他の会社さんにもお声がけしていますので、ベストなご提案をよろしくお願いいたします!」

 お客様のご要望には、

  • ●価格
  • ●デザイン
  • ●対応のスピード

が言及されています。

 このまま提案を考えると、曖昧ながらも厳しいお客様のリクエストに対して、消耗戦になりそうな予感がしますね。そこで、先ほどの「費用対効果で考えて頂くための、問いかけ」を考えてみます。

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 たとえば、こんな問いかけが考えられますね。

  • ●いま挙げられた「価格・デザイン・対応スピード」の3つ以外に大事なことはありませんか。もしかしたら、「会社のブランド向上」や「集客率アップ」など……(網羅性の確認)。
  • ●「スタイリッシュ」とおっしゃいましたが、具体的にどのようなイメージでしょうか。こちらにいくつかサンプルございますので、AとBだったらどちらがお好みか、ご意見いただけますか(具体感の確認)。
  • ●価格を重視しすぎると、デザイナーのクオリティーや納期に影響が出てきます。また、会社のブランド向上や集客率アップなども含めて、いちばん大事なことを改めて教えていただけますか(優先順位の確認)。

 お客さまの要望をそのまま受け止めて提案するより、要件整理に基づいた問いかけがあることで、お客さまにとっては、「当初はそこまで考えていなかったようなポイント」があぶり出されてきたり、頭の中が整理されたりすることによって、費用対効果をしっかりと考えやすくなります。

 これは、先ほどお話した引っ越しの物件探しに当てはめると、「価格の絶対的な金額ではなく、費用対効果で考えるモード」になっていただくための働きかけに相当するものです。

 課題や要望などの「要件」を整理していくことによって、お客さまの課題解決をより良く行えるようになり、結果的には、「予算の枠にブロックされる」ということも減っていくはずです。

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