「提案力」「迅速」より「わかってくれる」が大事
もちろん、お客さまの気持ちを察すれば「自分の業務や会社に対して興味を持っている様子がなく、判で押したようなマニュアル的なセールストーク」では、心が動きづらいでしょう。お客さまにとっては、いかに自分や自社のことをわかってくれるかというのがとても重要であるというデータがあります。
こちらのグラフをご覧ください。「会社の予算を使って営業から何かを購買した経験がある方」に対して、当社(TORiX)でアンケートを実施したものです。

お客さまが信頼を寄せるハイパフォーマー営業は、いったい何が違うのでしょうか。
この設問では、「過去に出会った中で最高だと感じた営業担当者の特徴を教えてください」と、お客さまに聞きました。自由回答方式で書いていただいたコメントからキーワードを抽出し、グルーピングしました。
調査結果を集計すると、一番多かった回答が「わかってくれる・意図を把握してくれる・的確・明確」の32%でした。注目すべき点は、「提案力」「迅速」「誠実さ」といった項目よりも、「ちゃんとわかってくれる」ことへのニーズが際立って高い点です。
ズレた営業の影響で張られた「予防線」
これほど多くのお客さまが「ズレない営業」を求めている背景には、「ほとんどの営業は、お客さまが求める期待とズレてしまっている」という現実があります。
先ほど例にあげたBさんは、「お客さまが忙しいからこそ、迷惑にならないように」という意図で、用意した簡潔なマニュアルトークを繰り返していました。しかし、それをお客さまは「自分(自社)のことをわかってくれていない」と感じてしまい、ズレが発生していたということになります。
こうしたことは、営業現場で日常的に発生しています。数々の営業担当者からたくさんの「ズレた営業」をかけられて落胆し続けてきたお客さまは、自然に学習した「予防線を張る行為」をします。それゆえ、簡単にはアポをくださらないわけです。そればかりか、力を込めた提案に対しても、「もっと安くなりませんか」など冷めたことをおっしゃるのです。
ここで、お客さまと自分との間で起こりうるズレを解消するスキルが身に付けば、お客さまにとって「わかってくれる(=ズレない)営業」に自然と近づいていきます。
マインドが高くて行動量が多いのに成果が出ない営業は、自分の思い込みによってお客様の間に発生している「ズレ」に気づかないことで、行き詰まっているケースが非常に多いのです。案外と見落とされがちなので、気をつけていきたいところです。
「営業力とは技術である。誰でも身につけられる」
東大卒、自分自身「コンペで8年無敗」の実績を持つ営業パーソンでもある筆者が、ついにそのノウハウを一冊の本にまとめて公開しました。「営業力は技術だから、誰でも身につけられる」という信念のもと、営業未経験から業界トップレベルに至るまでのステップを、ひたすら具体的に体系化したのです。
営業担当者とお客さまの間にある情報ギャップを乗り越えて、接戦を制する「3つの質問」が一つの柱です。「接戦状況を問う質問」ほか、具体的にその狙いと使い方を解説します。もう一つが、お客さまの希望や期待と、実際の営業活動のズレを解消する「4つの力」です。「質問力」「価値訴求力」「提案ロジック構築力」「提案行動力」として実用的に解説します。
「営業を科学する」が本書のモットー。勘や経験に頼らずに営業パーソンが育ち、そして着実に成果を上げる方法がここにあります。多くの営業経験者は目から鱗が落ちる思いをしていただけるはずです。
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