私はこれまで、3万人以上の営業担当者をご支援してきました。その際、一貫して考え続けてきたことがあります。「成果が上がって楽しく仕事している営業と、成果が上がらず苦しんでいる営業の間にある違いは何か」ということです。

 たとえば、「そもそも営業をやりたくない」などといったレベルであれば、それは根本の営業マインドのところに課題があるのでしょう。しかし、私が研修やコンサルティングの現場でよく遭遇するのは、むしろ「営業に対して前向きで、たくさんの努力はしているけれども、なかなか成果が出ない」ことに苦しむ若手営業担当者からの声です。

 マインドが高く保たれて行動量も多いのであれば、その努力はぜひ報われてほしいところです。がんばっているのに成果が出ない営業は、いったい、どこでつまずいているのでしょうか。

多くのお客さまにアプローチするハードル

 先日、エリア型やルート型の営業組織において、数人の営業担当者に対し、同行に近い現場ヒアリングを行う機会がありました。

 エリア型やルート型というのは、「○○県はAさんの担当」のように、エリアごとに顧客リストが割り振られ、街中にいるあらゆるターゲット顧客を回りながら営業していくスタイルです。

 例えば、医療機器を販売するメーカーであれば、大きな病院よりも街中のクリニックを巡回するようなケースです。飲食店向けの集客クーポンを販売するマーケティング会社であれば、本社のオフィスではなく商店街にある飲食店を巡回しているでしょう。そういったケースをご想像下さい。

 こういったエリア型やルート型の営業組織においては、1人の担当が100件以上の顧客リストを抱えていることも珍しくありません。関係がすでにできているお客さまであれば話はしやすいのですが、特にエリア型やルート型の営業組織で新規開拓を行う営業担当にとって、初めてのお客さまに対して営業活動をするハードルは、決して低くありません。

 というのは、当然ながら、お客さまの方も、日常業務を抱えて忙しい中で営業を受けるので、「商談」にまで持ち込むのが難しいからです。

「お客さまは忙しい」前提でどう考えるか

 私が同行をしながら現場ヒアリングをしていて印象的だったのは、「同じ現象に直面しても、営業担当者によって捉え方が全く異なる」ということでした。

 例えば、「お客さまは忙しい」という現象についてです。

 「成果が上がって楽しく仕事している営業」をAさん、「成果が上がらず苦しんでいる営業」をBさん、このように仮置きすると、AさんとBさんとでは捉え方や行動がまるで違いました。

 Aさんは、「お客さまは忙しいから、どんな一言を投げかけるか、色々と工夫してみよう」と考えていました。お客さまのビジネスや業務内容に合わせて、話す内容を色々と変えて試行錯誤されている様子でした。

 一方、Bさんは、「お客さまは忙しいから、あれこれ考えても無駄。とにかく簡潔に話そう」とされていました。Bさんは、どのようなお客さまであっても、「ほぼ一言一句違わず、同じ言葉で」会社から配られた資料を説明されていました。

 私はBさんに対して、「お客さまのビジネスや業務内容はそれぞれ異なるので、相手に合わせてトークを少しアレンジする」よう試みたことがあるのか尋ねてみました。Bさんの答えは「そうですね…。お客さまも忙しいので、あれこれ工夫をこらしたトークをしても、逆に迷惑になってしまうのではないかと思いまして」というものでした。

 Aさんに同行して、「お客さまのビジネスや業務内容に合わせてトークを変えて、お客さまの心をつかみ、商談をうまく進めている」様子を拝見していた私は、Bさんのコメントがことさら印象に残りました。

 Bさんは、「そうすることが、マイナスに作用する」と強く思い込み、どのお客さまに対してもまったく同じようにお話をされていたのです。

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