ラーメン店や居酒屋、風俗店が立ち並ぶ“昭和の空気”漂う通りから一本入ると、ふいに真新しい近代的なマンションが姿を現す。

 変化の真っただ中にあることを感じさせる景色が広がるこの街は、川崎市の堀之内・宮本町エリアだ。

 京急川崎駅を降りてすぐ、JR川崎駅の東口からも歩いて5分ほど。川崎競馬場や川崎競輪場からもほど近いこの一大歓楽街に、マンションが建ち始めたのは2010年代前半から。開発の先駆となったのは、新興デベロッパーのサジェスト(東京・渋谷)だ。「とても暮らすような街ではないし、事業性はないだろう」。業界の見立ては一様にこのようなものだった。

 だが今、このエリアはちょっとした“人気タウン”へと変貌しつつある。冷ややかにサジェストの動きを見ていた他社も追随し、マンション建設ラッシュに沸く。

若い子育て世代は「安くて便利」

 堀之内・宮本町エリアの変化の背景の1つは、若い共働き世帯の増加だ。

 子育てと仕事の両立を求められる若い共働き世帯が、住まい選びの際に重視するのは、交通の利便性や価格だ。堀之内・宮本町エリアは、京急線でもJR東海道線でも品川駅までの乗車時間は約10分。都心へのアクセスは抜群に良い。

 一方で、価格にもお手ごろ感がある。サジェストが当初、雑居ビルが建つ土地を仕入れて供給したマンションは坪単価220万円。「それでも最初はずいぶんと強気な価格設定だと思ったが、確かに交通の利便性だけ考えれば隣の大田区など周辺と比べて割安だ」。大手デベロッパー社員は再開発当時を振り返る。日銀の金融緩和に伴って、なおあふれる投資マネーの存在も、これまであまり注目されてこなかったエリアの活況を後押しする。

 従来、主に東京の西側の“憧れの街”というイメージ戦略に押され、実力を過小評価されてきた地区の不動産価格が上がっていることは、「来るかタワマン危機、憧れの街『湾岸』『ムサコ』のたそがれ」で紹介した。

 2020年以降の不動産下克上の主役は、決して千葉県の松戸だけではない。むしろポテンシャルの高さを考慮すれば川崎こそ、台風の目となってもおかしくはない。

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