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 20年夏の東京五輪の選手村を活用するマンション「HARUMI FLAG(ハルミフラッグ)」(東京・中央)。三井不動産レジデンシャルなど10社が共同開発するこのマンションの分譲が今年夏から始まった。注目の出だしは、第1期の供給戸数600戸に対して倍率は2.5倍強、14階建ての最上階の倍率は71倍。華々しいデビューを飾ったように見える。

売れ残り許されない超巨大物件

 だが結論から言えば、この総戸数4145戸に及ぶ超巨大物件の販売こそが、勝どきエリアの価格下落の引き金になった可能性が高い。

 選手村の跡地利用とあって、「レガシーづくりという意味でも売れ残りが許されない」という宿命を持つハルミフラッグ。そんな関係者の思惑もあって、このマンションの“売り”は、駅からは遠いことも手伝い「平均すると、70m2換算で6000万円台」。周辺相場を考えると「比較的お手ごろ」な点にある。

東京五輪に向け整備が進む選手村(写真:共同通信)

 販売は、19年では夏と秋の2回。東京カンテイのデータには、秋の売り出し部分は含まれていない。そう考えると、「最初の600戸の売り出しだけで駅別の平均価格を約25%下げる破壊力があった」(東京カンテイの井出武上席主任研究員)。そう考えるのが妥当だろう。

 このハルミフラッグによる直接的な駅別の平均価格引き下げに加え、割安な物件が大量に出回ることによる売れ残りを警戒し、自社の販売価格を下げたマンション事業者もいる。影響は周辺エリアにも当然及んでおり、豊洲は価格の上昇幅が2%にとどまったほか、月島も小幅の下落に転じた。いずれにせよ、この国家的プロジェクトの物件の存在が、最後の一戸を売り切るまで、湾岸エリアの価格の下落圧力と、かく乱要因になり続けることは間違いなさそうだ。

 今回、首都圏でのマンション価格が上昇したエリアと下落したエリアの比は「56:44」。18年12月24日・31日合併号特集「2019年 確実に来る未来」で紹介した、18年のこの比は「60:40」だった。その際、井出氏らの協力を得て、ハルミフラッグの状況なども加味しながら考えた19年の予想図は、『比率が「五分五分」に近づく』だった。ピタリ賞ではないものの、下落トレンドは当たっている。

首都圏3万戸割れほぼ確実に

 上昇・下落エリアの比では、予想ほど悪い方向に進まなかったとも言える2019年の不動産だが、マンションの販売戸数は大きく落ち込んだ。10月末時点での首都圏の新築マンション販売戸数は約2万2000戸で、1年を通しての数値とはいえ18年全体の約3万7000戸から激減。消費増税後の今年11~12月でこの差を埋める量の物件が出てくるとは考えにくく、「3万戸割れがほぼ確実」な情勢になっている。これは実に、バブル崩壊直後の1991年以来、28年ぶりの低水準になる。

 「2020年は、久方ぶりにマンション業界に冬の時代が到来する」。こう話すのは、住宅ジャーナリストの榊淳司氏。既に、大手の中でも「マンション販売では利幅が取れにくい」と考え始めるデベロッパーが出始めた。アベノミクス発動当初とは異なり、「無理してまでマンション建設ラッシュには参加しない」「売れる物件だけを確実に売るという」という業者のスタンスの変化が、足元の「首都圏の3万戸割れ」に影響していると見る。