年末年始の休みは、体や精神のリセットができる貴重な時間。仕事のしがらみや悩みを忘れて頭をぼーっとできるときこそ、読書に最適だ。日経ビジネスPLUSで「50歳からの資産運用」を連載している大崎匠氏に読むべき本を聞いた。

バブル崩壊前後に必ず読まれる1冊

『大暴落1929』 著者:ジョン・K・ガルブレイス

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バブル崩壊、株価暴落のあとに必ず読まれる、恐慌論の名著。

●会社型投資信託のブーム
●レバレッジ効果への信仰
●バブル紳士の跋扈(ばっこ)点
●動きの鈍いFRB(米連邦準備理事会)

これ、いつの話?

 なんだか既視感を覚える内容だが、現代の金融市場を取り巻く環境の話ではない。100年近く前にアメリカで生じた、株価の大暴落とその後の世界恐慌に関する内容である。

 「本書は1955年に初版が発行された。以来、40年、版を重ねている。この本がこれだけ長いこと売れ続けているのは、著者はともかく中身がいいからだと評価していただいているようだ。まずいくらかは役に立つかもしれない。だがこの本が時代を超えて長寿を保っているのは、別に理由がある。増刷され本屋に並ぶたびに、バブルや株安など何事かが起きるのだ。

 すると、この本への関心が高まる。そう遠くない昔に好景気が一転して深刻な恐慌につながったときのことを、多くの人が知りたいと考えるからだろう」(1997年版まえがき)

 ガルブレイスの作品の中では小品だが、中身は濃い。新型コロナウイルス禍での株価の高騰といった資産バブルを想起させるような現在の状況を考えるうえで、貴重なテキストといえる。

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