全2895文字

 近年の国内通信市場は「高止まりしている」とされる携帯電話サービスの値下げをめぐり、政府と大手通信会社との綱引きが続いてきた。2020年はこうした構図が崩れ、新たな競争時代への扉が開かれそうだ。

 この扉の鍵を握るのは、19年に携帯業界に参入する予定だった大手IT企業の楽天。当初の事業スタートとしていた19年10月の直前に実質延期を発表し、正式な料金プランも先送りした。その楽天が、20年春にも商用サービスを始める見通しだ。

楽天が2019年9月に開催した携帯電話事業説明会で、本格参入の延期を発表した三木谷浩史会長兼社長
楽天は全社を挙げて基地局の整備を急ぐ(写真は東京都台東区)

 実質延期した最大の理由は、スマートフォン(スマホ)と電波をやり取りする「基地局」の設置作業が遅れたことだ。サービスの要となる基地局が不足すれば、電話が途切れたりつながりにくくなったりする。作業の遅れを懸念した総務省が3度にわたり楽天を行政指導したが、間に合わなかった。

 その代わりに、最長で20年3月末までの期間限定で始めたのが「無料サポータープログラム」。国内・国際電話や国内外でのデータ通信、、ショートメッセージなどを無料で使えるが、申し込んで利用できるのは東京23区と大阪市、名古屋市、神戸市に住む18歳以上の5000人に限られる。あくまで試験サービスの位置付けだ。

 日本における携帯電話サービスの通信品質の高さは世界有数とされる。楽天はプログラム終了までに基地局の設置作業を済ませられるとするが、携帯大手に遜色ない通信品質を確保するのは容易ではない。

 それでも国内で13年ぶりとなる新規参入はNTTドコモやKDDI(au)、ソフトバンクによる寡占を崩し、値下げ競争をもたらす、との期待は根強い。こうした消費者の期待に応えるためにも楽天はインフラ整備を急ぐ必要がある。