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 2020年の百貨店業界は、これまで業績をけん引してきた訪日外国人向けの販売の減少や、消費増税による落ち込みをどう補っていくかなど、各社の地力が問われる年になりそうだ。

 大丸松坂屋百貨店を傘下に持つJ・フロントリテイリングと高島屋は19年10月、免税売上高の失速を理由に20年2月期の純利益の予想を引き下げた。

 原因は中国の人民元安だ。3~8月の人民元の相場は1元=15.9円程度と前年同期に比べて1円弱の円高・元安となった。観光客が日本で買い物をする際の割安感が薄れている。

 より深刻なのは、米中貿易摩擦だ。交渉は一進一退が続き、いつ落ち着くかが見通せない。中国経済の先行き不安が高まり、購買意欲が下がり続ける恐れがある。

 免税売上高は百貨店全体の約1割を占め、うち8割超は中国人だ。「中国人向け免税売上高が1割減れば、百貨店全体の売上高が1%弱落ちる」(百貨店関係者)計算で、業績を左右しかねない。

 さらに、「東京五輪の開催時期は、ホテルや航空機の値段が高くなり、中国人観光客は減る」(証券アナリスト)との見方もあり、20年は外国人の免税売上高の追い風は期待しづらい。

 こうした状況に消費税増税が追い打ちをかける。飲食料品を対象にした軽減税率やキャッシュレス決済に対するポイント還元制度は、食品売り場を除くと百貨店とは縁遠い。

 増税直後の10月の収益減のペースは前回増税の14年と同程度という。増税後1年続いたとされる中間層の消費の落ち込みが繰り返されるなら20年は厳しい年になる。

アパレルのリストラ

 百貨店を支えてきたアパレル大手の異変も懸念材料だ。

 オンワードホールディングス(HD)は19年10月、大規模な閉店方針を明らかにした。「23区」や「組曲」など、百貨店中心に展開してきた国内外約3000店舗のうち、2割もの削減を断行するとの見方がある。

 アパレル不振の原因について、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの渡辺藤晴マネージング・ディレクターは、「百貨店の衣料品のデザインが中途半端になってしまったうえ、価格競争でも勝てないため」と分析する。ユニクロを展開するファーストリテイリングなど、製造から小売まで一貫して手掛けるSPAは、大量のデータから顧客の好みを導き出し、短いサイクルで商品を開発する手法が奏功している。

 百貨店バイヤーの一人ひとりのセンスや能力は高くとも、「大量のデータ解析に1人のスーパーマンで対抗できる時代ではなく、百貨店の優位性が相対的に落ちた」(渡辺氏)。

百貨店は売上高、店舗数とも減少傾向が続く
●全国百貨店売上高と店舗数(日本百貨店協会調べ)

 地方百貨店で衣料品が売れなくなったことも大きい。20年は、高島屋港南台店、新潟三越、東急百貨店東横店、西武大津店、西武岡崎店、そごう徳島店、そごう西神店が閉店を計画している。ここ10年で業界全体の店舗数が約60店も減った流れは変わりそうにない。

 地方の衰退とアパレルの不振が負のスパイラルを生み、構造改革は待ったなしの状況だ。三越伊勢丹ホールディングスは自然減などにより、21年度までに18年度比で3700人の従業員を削減する計画を明らかにしている。