全2314文字

 電機業界の2020年は、モノを売り切るビジネスモデルの変革がいよいよ迫られる1年となりそうだ。IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などデジタル技術の導入が本格化する中、既存のビジネスモデルが崩壊しつつある。

中期経営計画を発表するパナソニックの津賀一宏社長(写真=東洋経済/アフロ)

 成長の岐路に立つ筆頭がパナソニックだ。19年5月に22年3月期までの中期経営計画を発表、11月には詳細を明らかにした。競争力の高い部品を核にサービスやソリューションを提供する「脱売り切り型」のビジネスモデルへの脱却を急ぐ。

 新中計で基幹事業に位置付けるのが「空間ソリューション」「現場プロセス」「インダストリアルソリューション」の3つ。空間ソリューションでは照明や空調など家電や電材の技術をオフィスや商業施設などへ展開。現場プロセスではAIやIoTで、工場やサプライチェーンを最適化していく。

 一方、前中計で成長事業に位置付けていた車載電池や車載機器は「再挑戦事業」に見直した。車載電池では米EV(電気自動車)大手テスラ向けの追加投資には慎重だ。住宅と家電は「共創事業」として他社との協業で競争力の強化を目指す。

 「人とつながるソリューションを提供する会社になる」と、パナソニックの津賀一宏社長は力を込める。もっとも、中計最終年度の会社全体の売上高や営業利益の目標や投資金額は明らかにされておらず、成長戦略は不透明感も残る。

8KとAIoTは道半ば

 世界最大のEMS(電子機器の受託製造サービス)、台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業傘下で、コスト削減などでV字回復を果たしたシャープも、成長へもがいている。

 中計最終年となる20年3月期の連結営業利益は1000億円の見通しで、当初計画から500億円引き下げた。注力領域に掲げていたのはAIとIoTを融合させた独自の「AIoT」と高精細映像の「8K」だが、ともに普及は道半ばだ。

 シャープは今後、成長領域で法人向けビジネスを拡大する考え。19年10月にはAIoTを手掛ける子会社が始動。自社のプラットフォームを他社に提供するビジネスに乗り出す。仲間作りを急ぐが、プラットフォームを巡る争いを勝ち抜くのは容易ではない。20年は成長力が問われる年になりそうだ。

 IoTを成長戦略の軸に据える日立製作所や東芝は、子会社再編の行方に注目が集まる。

日立製作所の東原敏明社長は子会社再編を主導する(写真=つのだよしお/アフロ)

 日立製作所は、22年3月期までの中計期間中にIoT事業「ルマーダ」とのシナジー効果の有無で、日立化成など上場子会社4社を売却するか取り込むかを決断する考えを示している。

 中計最終年となる22年3月期の売上高営業利益率目標は10%超と、19年3月期に達成した8%から2ポイント超上積みする考え。目標達成に加え、ルマーダで事業の競争力を高められるか。このシナリオに乗れない子会社や事業を分離する方針は揺るがない。

日立製作所は子会社の再編を続ける
●子会社再編の進捗とこれまでの実績(2019年11月末時点)

 不正会計で経営危機に陥った東芝も上場子会社の再編に動く。19年11月には東芝プラントシステムなど上場子会社3社をTOB(株式公開買い付け)で完全子会社にすると発表した。今後の焦点は上場子会社で残るPOS(販売時点情報管理)レジ大手の東芝テックの扱いだ。IoT領域では東芝テックとのシナジー効果も見込めるだけに、成長性を見極めながら子会社化するか、売却するかの判断を下すことになりそうだ。