趣味の一つは投資の本を集めること。証券アナリスト、ファンド・マネジャーとして長年活躍し、『投資をするならこれを読め』の著者でもある太田忠氏に、ニューノーマルの時代に読んでおきたい投資本5冊をあげてもらった。

太田忠(おおた・ただし)
太田投資評価研究所代表取締役社長。1988年関西大学文学部仏文学科卒。第一証券入社。国際業務部で小型株の調査を担当。94年DBモルガン・グレンフェル・アセット・マネジメント(現ドイチェ・アセット・マネジメント)に入社、小型株のトップアナリスト、ファンド・マネジャーとして活躍。97年、JPモルガンアセットマネジメントを経て、現在、個人投資家や機関投資家向け投資顧問会社を経営。

 2020年──。数字の語呂的にも非常に良い響きだし、何よりも東京にオリンピック・パラリンピックがやって来るはずの年だった2020年。それが新型コロナショックというパンデミックにより、世界中の人々が日常生活に大幅な制限を強いられ、経済も大幅に悪化。間もなく1年が経過しようとしているが、新規感染者数は増加の一途をたどるばかりで出口が見えない状況になっている。

 当然のことながらマーケットも大きく揺すぶられた。新型コロナ流行初期の株式市場の下げ方は、瞬間風速では過去のどの急落局面よりも悲惨な状況を呈した。その後は経済回復への期待感やコロナワクチン開発の動きで急速に戻して、逆に実体経済から乖離(かいり)するほどの上昇を演じている。

 「人々の常識から外れた値動きが頻発する」というのが、ニューノーマル時代のマーケットだと私は考えている。そこで、そうした状況でもマーケットに立ち向かうことのできる名著のエッセンスを紹介したい。

成功の秘訣は「心の状態」にある

 マーケットの次の展開を知る必要はない、稼げるかどうかは分析力ではない、投資家としての成功は邪念や恐怖心がなく自分の思い通りに行動できる心理状態、すなわち「ゾーン」の心を持っているかどうかにかかっているというのが『ゾーン 相場心理学入門』の筆者の主張だ。

 成功するトレードを実行するためには「一貫性」を手に入れること。これは自分の信念と姿勢によってのみ形成されるものであって、マーケットの中にはない。マーケットは何が起ころうとも常に中立な存在であり、どの瞬間にも様々な情報を発している。それがどのような意味を持つのかは、自分の判断力次第である。そして、投資機会や損益を決定するのはマーケットではなく自分自身である。

 「マーケットでは何事も起こり得る」という考えを持つことによって、トレードを確率で捉えることが重要だ。優秀なトレーダーは「自分の規則に厳格であり、自分の期待に柔軟である」のに対して、典型的なトレーダーは「自分の規則に柔軟であり、自分の期待に固執する」傾向が強い。

『ゾーン 相場心理学入門』マーク・ダグラス(著)、世良敬明(訳)、パンローリング、2002年

自分のタイプを知っておこう

 『投資の行動心理学』も株式市場で成功するかどうかは投資家の心理面によるところが大きい、との主張がメインだ。まずは第8章にあるチェックリストで自分の投資家指数を測定し、自分がどのような投資家であるのかを客観評価してから本文に進んでほしい。

 多くの投資家はトレーディング手法のせいではなく、鍛錬不足によって損失を被っている。テクニカルであれファンダメンタルズであれ、自分が決めたルールに従わなければ何も学ぶことはできない。自分のルール以外のマスコミ、ブローカー、友人などの外部情報に惑わされることが多ければ、常に間違った学習をしていることになる。ほとんどの投資家はいくつもの変数を取り込んで、行動を複雑にしている。

 例えば、マーケットで最も利益を得ることのできるトレード手法はトレンドに追随することである。長期トレンドに限らず、短期においてもトレンドはしばしばマーケットに現れる。しかし、トレンドに従うトレードは投資家にとって最も難しい部類に入る。「ブル(強気)マーケットでブルになり、ベア(弱気)マーケットでベアになる」という極めて単純なことさえもなかなか行えない。

 明らかに悪い決算内容が出ているのに即行動できない投資家は株価が継続的に下落している最中にも、もうすぐ状況は改善すると期待している。そして、ついに反転の動きが始まる前のパニック的底値で買い増すことはせず、まさにその状況で全株を売却するのだ。これは典型的な事実誤認の行動であり、多くの人が事実誤認によって自分の立場を正当化しようとする。損失が膨らんでも損失を現実のものとみなさないのは認知の喪失である。

『投資の行動心理学』ジェイク・バーンスタイン(著)、青木俊郎(訳)、東洋経済新報社、2003年
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