約7万年前に急上昇した人類の能力
『人体600万年史』や『サピエンス全史』にあるように、ヒトの遺伝子的進化はヒトの誕生(20万年前)で一段落している。そこからの変化は微々たるものである。しかしその能力は7万年前から急激に上がっている。弓矢や土器などの道具をどんどん発明して広め、その生活レベルは格段に向上してきた。それこそが文明的進化だ。人類は190万年前、ホモ・エレクトスにより完全な直立歩行を会得し、長距離を歩き走る能力、道具をつくり用いる能力を獲得した。ホモ・エレクトスは発生したアフリカを出、アジアやヨーロッパに拡がった。しかしまだ文明には行き着かなかった。その次のネアンデルタール人たちも。
『サピエンス全史』によれば、7万年前の「認知革命」こそがヒトを今日の高み(ときどき混沌)に引き上げた理由だという。ヒトは「虚構 Fiction」、つまり架空のものごとについて考え語る能力を身につけたことで、大規模な協力体制を築き、急速に変化する環境に対応できるようになった。これが「認知革命」であり、その中での3大虚構が「貨幣」「宗教」「帝国」だ。確かにこれまで、宗教対立や国家間の紛争こそが、人々を感染症のリスクに晒し、多くの命を奪ってきた。われわれは、こういった虚構をどう使いこなしていけるのだろうか。そして、文明化の必須項目であった「森林開発」「都市化」「交通網」と感染症対策を両立させていけるのだろうか。そしてもし両立できないなら、何を諦めるのだろうか。
文明はウイルス一つで吹き飛ばされるかもしれないからこそ、長期的視点で考えよう!
私自身、現代はヒトの文明的進化が主であり、遺伝子的進化など今さら考えても仕方ないことと思っていた。しかし今回「COVID-19でわかったこと」の一つは「近視眼に陥らず、人類史・ウイルス史レベルでものごとを捉えよう」ということだった。ウイルス一つがヒトの文明など吹き飛ばしてしまうかもしれないのだから。
これからの「ニューノーマル」でわれわれが(ヒトとしての存続をかけて)取り組まなければならないことは、なにごとにつけ「近視眼でなく俯瞰的・長期的視点で調べ考える」こと。まずはみんなでジャレド・ダイアモンドの『危機と人類』から読んでみようか。われわれよりずっと未来を生きる、子どもたちのために。
本書は、『経営戦略全史』『新しい経営学』などで知られる三谷宏治氏が、ビジネスパーソンに向けて読書法を解説したものです。
私たちの体が食べたものでできているように、私たちの思考もまた、読んだ本でつくられています。だから、ビジネスパーソンの読書には「戦略」が必要なのです。
自分の年齢に合わせて読むジャンルを変える「読書ポートフォリオ・シフト」、効率的にリターンを得る「セグメント別ワリキリ読書」、1冊の本からより多くの学びを得る「発見型読書法」など、コンサルタントならではの読書術が数多く紹介されています。(日経ビジネス人文庫は創刊20周年)
有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。
※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。
※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。
この記事はシリーズ「Books」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?