日経ビジネスは毎年恒例のムック『徹底予測2023』を発売しました。米・欧・中・日の賢人たちによる23年の世界、各地域についての予測をはじめ、日経ビジネスの専門記者による30業種の23年の動向、23年に知っておくべき最先端テクノロジーなど、日経ビジネス編集部が総力を挙げてお送りします。

 もはや、何が起きても不思議ではない──。2023年を迎えるに当たり、そんな心境になっている人も多いのではないだろうか。

 22年2月24日、我々はこれまでの世界を保っていた秩序が覆される様子を目の当たりにした。ロシアによる、旧ソ連の連邦構成共和国だった隣国ウクライナへの軍事侵攻だ。多くの人があり得ないと考えていたことが、現実のものとなった。

 国連によれば、22年12月4日時点のウクライナ市民の死者は少なくとも6700人。多数の人々が犠牲になる悲劇が今も続くが、ロシアが仕掛けた戦争は長期化の様相を呈している。

ウクライナ南部の港湾都市マリウポリは街の大部分が破壊された(2022年4月、写真:ロイター)
ウクライナ南部の港湾都市マリウポリは街の大部分が破壊された(2022年4月、写真:ロイター)

 冷戦終結から約30年間、大国同士が軍事衝突する心配がほとんどない時代が続き、企業はビジネスの自由を謳歌してきた。経済合理性を判断基準とし「最も安いところでつくり、最も高く売れるところで売る」というグローバル化を追求してきたのだ。

 だが、そんな景色が、ウクライナへの軍事侵攻で一変した。各国の企業はロシアから相次いで撤退。さらに、世界有数の資源国であるロシアにエネルギーを依存していた影響で、世界的にエネルギー価格が急騰。それが世界中の産業に打撃を与え、相次ぐ値上げ、そしてインフレ圧力へとつながっている。

経済と政治は不可分

 「経済の力はどんな時も政治力を具現化する手段であった。(中略)最も原始的な種類の戦争だけが経済の要素から独立していた」。英国の政治・歴史学者E・H・カーは1930年代に執筆した代表作『危機の二十年』でこう喝破した。経済と政治は切り離せないという真理が今、あらためて突き付けられている。

 米国と中国という2つの大国による覇権争いも、世界のビジネスを揺るがす。バイデン米政権は2022年秋、米国人が中国で先端半導体の開発や生産を支援することを「許可制」に変更。中国による先端半導体の製造を阻む政策の一環で、実際に中国から引き揚げる技術者も出てきているといわれる。政治は個人の働き方をも大きく左右する。

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