時にはタレント、時には女優、時には声優・歌手として幅広い分野で活躍を続ける「しょこたん」こと中川翔子さんが2019年夏、衝撃的な書籍を出版した。自身のいじめられ体験を赤裸々につづった『「死ぬんじゃねーぞ!!」 いじめられている君はゼッタイ悪くない』(文芸春秋)だ。

 中学時代、ささいなことからいじめの標的になり、「死にたい」と思うまで追い詰められたという中川さん。当時の気持ちを振り返りながら、今現在いじめで傷つき悩む子どもたちや周囲の人々に対し送ったメッセージが本書だ。

 学校でのいじめは卒業しても心の奥にトラウマとして沈殿し、その後の人生に様々な影響を与えかねない。人は学校時代のつらい記憶とどう向き合い生きていけばいいのか。改めて中川さんに聞いた。

(聞き手は鈴木信行)

   

本を読ませて頂きましたが、衝撃的な内容でした。我々男性は「女子同士のいじめ」にあまり詳しくなく、正直、暴力を伴う「男子同士のいじめ」に比べるとまだ“楽な部分”もあるのではと思っていましたが、とんでもない間違いでした。

中川:私も男子の世界はよく分からないんですけど、一つ言えるのは、いじめで思い悩み命を絶ってしまう子がいるという点は男の子でも女の子でも変わらないということです。そしてそういうひどいいじめは決して特別なことではなく、どこにでもあります。むしろ「当たり前のようにあるものだ」という前提でいないと周囲の大人は見逃してしまい、それこそ取り返しのつかないことになってしまうんです。子供は「自分がいじめられている」とは言いませんから。

中川さんも言えなかった?

中川:絶対知られたくなかったですね。親には言えないし、言いたくないし、知られたくないし限界まで我慢しました。でもそこまで追い込まれていても、クラスでのいじめは表面だけを見ているとなかなか分かりません。例えば、担任の先生も私の中学の場合は授業以外の時間は教室にいませんでした。その先生がいない10分の休み時間とか、他の教室への移動時間にこそいじめは起きるんです。大人にとっては1週間でも一瞬で過ぎちゃうけど、いじめられている子供にとっての10分って、とても長いんですよね。

<span class="fontBold">中川翔子(なかがわ・しょうこ)</span><br> 1985年生まれ、東京都出身。 歌手・タレント・声優・女優・イラストレーターなど、活動は多岐に渡り、多数のバラエティ番組にも出演中。 2020年東京オリンピック・パラリンピックの「マスコット審査会」メンバーとしてマスコット選定に携わり、東京都で聖火ランナーも務めることが決定。 また、2025年開催の万博に向けた「万博誘致スペシャルサポーター」としても活動している。 2019年夏には、自身の経験を元に書籍『「死ぬんじゃねーぞ!!」いじめられている君はゼッタイ悪くない』を出版。以降は多数の講演会等に登壇し、多様化するいじめ問題に取り組んでいる。写真:北山宏一(以下同)
中川翔子(なかがわ・しょうこ)
1985年生まれ、東京都出身。 歌手・タレント・声優・女優・イラストレーターなど、活動は多岐に渡り、多数のバラエティ番組にも出演中。 2020年東京オリンピック・パラリンピックの「マスコット審査会」メンバーとしてマスコット選定に携わり、東京都で聖火ランナーも務めることが決定。 また、2025年開催の万博に向けた「万博誘致スペシャルサポーター」としても活動している。 2019年夏には、自身の経験を元に書籍『「死ぬんじゃねーぞ!!」いじめられている君はゼッタイ悪くない』を出版。以降は多数の講演会等に登壇し、多様化するいじめ問題に取り組んでいる。写真:北山宏一(以下同)

おばあちゃん手製のプリクラ帳

いじめのきっかけは、本当にささいなことでした。

中川:本当のきっかけはよく分かりません。いくつかあるきっかけの一つだと思うんですが、私の場合は「プリクラ帳を見せて」と中学に入ってすぐ隣の子に言われたのが始まりでした。おしゃれな今どきの目立つ感じの子で、後にいじめグループのボスになっていく子なんですが、私はプリクラ帳を持っていなかったのです。見ると、みんながプリクラ帳を見せ合い楽しそうにしている。

 そこで、何か代わりになるものはないかと家中を探しました。私は小学校3年生のときに父を白血病で亡くしていて、母と祖母の3人暮らし。そのおばあちゃんが和紙で作ってくれたノートに、急いで撮ったプリクラを貼って持って行ったんです。

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