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切れやすい怖い人というイメージは本当?

小説などでも信長は切れやすい、怖い人として描かれる場合が少なくありません。

加来:小説を読んでいる人は、実は現実とは遠いところで遊んでいます。遊ぶことと学ぶことは基本的に違うものです。小説は、書いている人間の知性を超えるものにはなりません。小説家はできあいの活字になっている書物から話をつくります。しかし、明らかに歴史を勘違いしていることが少なくありません。

 結果論から見た歴史になっている場合が多い。一方、『歴史の失敗学』では、信長が金ヶ崎で逃げたという事実をこう捉えます。まずその前に信長の大いなる勘違いがあった。妹を嫁がせて同盟関係にある浅井は裏切らない。そんな思い込みが強かった。

 金ヶ崎城は三面を山に囲まれ、一面は日本海です。普通なら攻めるべき場所ではない。信長には浅井が裏切らないという確信があったからこそ攻めた。朝倉・浅井の同盟がかつてあったが、それでも浅井は中立を守るだろうと信じ込んでいた。

 思い込みで失敗する例です。結果から歴史は学べません。学べない人は固定観念にとらわれていて、結果論からくる歴史の悪癖から逃れられません。

思い込みにとらわれて失敗する。信長に限らず、多くのビジネスパーソンが起こしがちな過ちですね。信長の一番のすごさはどこにあるのでしょうか。

加来:信長がすごいのは、追い詰められた時にとった行動です。絶体絶命の時こそ、原理原則に立ち返らないといけません。味方と思った人間に裏切られたらどうするか。全部失うかもしれない。逃げて帰ってくる以前の問題でこのままでは殺される。

 信長は物事をよく考えていました。金ヶ崎の窮地で、一番優先すべきは命を取られないこと。そのための決断を躊躇(ちゅうちょ)しなかった。だからこそ、信長は逆境を切り抜けることができたのです。