今年は押井守監督の本の当たり年。日経ビジネス電子版の連載が単行本になった『押井守監督が語る映画で学ぶ現代史』と、ほぼ同時期に映画ライターの渡辺麻紀さんとの対談形式で刊行された『押井守のニッポン人って誰だ!?』。どちらも監督の本業である「映画」を切り口に、歴史や社会の独特の見方を語り下ろしています。
本コラムは、語り手、押井守監督の面白さを引き出した聞き手である、渡辺麻紀さんと野田真外さんに、「私が話した押井守」について語り合ってもらおうという企画です。実は『ニッポン人……』の発行元、東京ニュース通信社さんとの連動対談となっておりまして、別パートがこちらからお読みになれます(12月8日午後5時公開予定)。どちらも合わせてお楽しみください。まだ書籍をご覧になっていない方は、この対談をきっかけにぜひ、お手に取っていただければ幸いです。では、ごゆっくりどうぞ。(編集Y)
渡辺麻紀(以下、渡辺):ちなみに野田さんはおいくつなんですか。
野田真外(以下、野田):53歳です。
渡辺:私よりもずいぶん若いじゃないですか、私はもう60をとっくに過ぎてますから。
野田:以前から「押井守業界」の大先輩だと思っていますよ(笑)。
渡辺:私は押井さんと4つしか違わないから態度がでかいのかな。
野田:そうなんですか?(笑) 渡辺さんが押井さんを取材されているところを見たことがないので分かりませんけど。

渡辺:私は「009」とか「8マン」の話をしていると、「私も見てました」とか「でもほら、うちは田舎だったから、それは映ってなかった」みたいな感じになって妙にラフになってしまうんですよ(笑)。
野田:僕は1967年生まれで、一回り以上違いますね。だからそういう子供のころの話をされると、僕はもうちょっと後なんで、という話になりますね。
一番好きな作品は?
渡辺:野田さんは押井さんの作品で何が一番好きなんですか。
野田:僕はやっぱり「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」ですね。
渡辺:そうですか。
野田:何だかんだいっても、自分にとってはあれが押井作品の原点だし、何度観ても新鮮です。それと、この間久しぶりに4DXで「機動警察パトレイバー the movie」(以下「パトレイバー1」)を観たんですけど、いまさらですが「やっぱりこれは傑作だ」と改めて思いましたね。
渡辺:「パトレイバー1」は面白いですよね。
野田:こんなに面白かったっけと思って。しかも、4DX上映で風だの水しぶきだのがかかると、なおさら面白いんですよ。
渡辺:私も「もしかしたら最後まで残るのは、これ(パトレイバー1)なんじゃないかな」と思ったりするんですよ。「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」(以下「攻殻」)はどうなんでしょうか?
野田:僕は「攻殻」を通しでちゃんと観たのはたぶん5年ぐらい前が最後だと思うんですけど、当たり前ですがちょっと古臭く見えるところもあるんですよね。
渡辺:そうなの?
野田:もちろん映画としては面白いですが、一番気になったのは一部の効果音が「昔の効果音」なんですよね。「アヴァロン」とか「イノセンス」から後は、押井さんがめちゃめちゃ音にこだわるようになりましたけど、「攻殻」まではわりと普通の効果音も使っているから、そこら辺は印象として古臭く感じるなあと思いました。「パトレイバー」の2本の劇場版はDVD化する際に5.1chにして音楽を含めて作り直しているせいか、先日の「パトレイバー1」もあまり古臭くは感じなかったですね。
渡辺:押井さんはすごい音響にこだわりますものね。
野田:「攻殻」も後年に「2.0」で音を作り直した方は全然印象が違うし。
渡辺:私は押井さんの作品で、「御先祖様万々歳!」がすごい好きですね。
野田:僕も大好きです。
渡辺:だけど最近全然見てないので、今見たらどうかちょっとよく分からない。ただ、「パトレイバー1」は見直したときに、うわーっ、むちゃくちゃ面白いと思ったので。「機動警察パトレイバー2 the Movie」以下「パトレイバー2」)に関してはサントラまで買いましたからね。
でも押井さんにアニメを撮ってほしいですよね。
野田:そうですね、そろそろ「ぶらどらぶ」が観れるのではと思っているんですが(その後、12月18日から第1話特別版が公式YouTubeチャンネルで無料配信されることが発表された)。
渡辺:それに、私の名前に似たキャラクターを出していると押井さんから聞いて、気にしているんです(※「ぶらどらぶ」には「渡部マキ」という名前の人物が出てくる)。
野田:押井さんはよく、小説なんかの登場人物に自分の周りにいる実在の人の名前を付けちゃうんですよね。
渡辺:「立喰師列伝」のときも出てくれと言われて驚いたんです。あれは本人でも(事前に)知ってないと分からないぐらいで。
野田:渡辺さんも出ているんですか、「立喰師列伝」。
渡辺:出ているんです。押井さんに、「来て」と言われてしまうと断れない。
野田:僕ももちろん呼ばれて行きました(笑)。
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