バイオベンチャー・ユーグレナの出雲充社長は『嫌われる勇気』の熱烈な愛読者。その出雲社長が、初めて著者の岸見一郎氏と対談した(前回は、こちら)。

 今回は、リーダーシップにまつわる出雲社長の悩み相談。

 岸見氏が著書『ほめるのをやめよう』で提唱するのは、「民主的なリーダーシップ」。部下に対して、叱ることも、ほめることもやめ、「ありがとう」という言葉をかけようと、世のリーダーたちに呼びかける。

 しかし、出雲社長は「頭では分かるものの、実践するのが難しい」という。

 そんな出雲社長に対する、岸見氏のアドバイスは「『でも』と言いたいところを我慢しよう」。その心は?

出雲:今回は、私の悩み相談です。

 岸見先生の『ほめるのをやめよう』は「民主的リーダーシップとは何か」を説いた本です。私も読んで非常に共感したのですが、いざ自分が実践するとなると、「これって、本当にできるのかな?」と、思ってしまうところもありまして……。

 いや、本当にお恥ずかしい話なのですが、本を読み進めながら、「現実問題として、これは実践可能なことなのか?」という疑念を抱いてしまったのです。

岸見:どこでしょう。ぜひ教えてください。

出雲:いやあ……。しかも、そんな疑念が湧いてきた矢先、私の気持ちを見透かしたような記述が本に出てきました。158ページです。

 ほとんどの人が「先生の話はすごくわかります、でも」といいます。英語でいうと「yes, but」です。「はい、わかりました、でも」といった時点で、しないと決めているといって間違いありません。どうしようか迷っているわけではないのです。

 まさに私が、「わかります。でも……」と、心の中で言いかけたとき、この記述が出てきて、読みながら思わず、大笑いしちゃいました。

 しかし、これを読んでもなお、私の心は、「yes, but」なのです。先生の説く「民主的なリーダーシップ」に納得しながらも、「変わりたくない」「今のままでいたい」「新しいことに挑戦したら失敗するのではないか」といったことを、あれこれ考えてしまうのです。

<span class="fontBold">岸見一郎(きしみ・いちろう)</span><br />1956年、京都生まれ。哲学者。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学(西洋哲学史専攻)。著書に『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』(古賀史健氏と共著、ダイヤモンド社)、『生きづらさからの脱却』(筑摩書房)、『幸福の哲学』『人生は苦である、でも死んではいけない』(講談社)、『今ここを生きる勇気』(NHK出版)、『老後に備えない生き方』(KADOKAWA)。訳書に、アルフレッド・アドラー『個人心理学講義』『人生の意味の心理学』(アルテ)、プラトン『ティマイオス/クリティアス』(白澤社)など多数。
岸見一郎(きしみ・いちろう)
1956年、京都生まれ。哲学者。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学(西洋哲学史専攻)。著書に『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』(古賀史健氏と共著、ダイヤモンド社)、『生きづらさからの脱却』(筑摩書房)、『幸福の哲学』『人生は苦である、でも死んではいけない』(講談社)、『今ここを生きる勇気』(NHK出版)、『老後に備えない生き方』(KADOKAWA)。訳書に、アルフレッド・アドラー『個人心理学講義』『人生の意味の心理学』(アルテ)、プラトン『ティマイオス/クリティアス』(白澤社)など多数。
<span class="fontBold">出雲充(いずも・みつる)</span><br />ユーグレナ社長 1980年生まれ。東京大学農学部卒。2002年、東京三菱銀行入行。2005年8月、ユーグレナを創業。同年12月、微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の食用屋外大量培養に世界で初めて成功。起業を志すきっかけとなったのは、東京大学に入学した1998年、インターンシップで訪れたバングラデシュで「日本では出合うことのない、しかし世界に確実に存在する本当の貧困」と出合い、衝撃を受けたこと。ユーグレナ由来のバイオ燃料の開発などでも注目を集める。
出雲充(いずも・みつる)
ユーグレナ社長 1980年生まれ。東京大学農学部卒。2002年、東京三菱銀行入行。2005年8月、ユーグレナを創業。同年12月、微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の食用屋外大量培養に世界で初めて成功。起業を志すきっかけとなったのは、東京大学に入学した1998年、インターンシップで訪れたバングラデシュで「日本では出合うことのない、しかし世界に確実に存在する本当の貧困」と出合い、衝撃を受けたこと。ユーグレナ由来のバイオ燃料の開発などでも注目を集める。
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