新型コロナウイルスSARS-CoV-2(以下新型コロナ)の感染が再び拡大しています。社会に与える影響を食い止めるためにワクチンの開発が進み、接種が8日から英国でスタート。ロシアでも5日から大規模接種を始め、米国などでも始まろうとしています。

 日経ビジネス電子版で連載させていただいた、ウイルス免疫学者、峰宗太郎先生との対話は「現状で分かっていること」「分かっていることから論理的に導ける可能性」に絞って「自分の頭で考えるための素材」を提供していただくスタンスを貫き、おかげさまでご高評をいただきました。掲載から半年あまりたっても、事実関係について修正する箇所が見当たらないことからも、「考えるための基礎知識」をご提供できたのではないかと思います(記事リンクはこちら)。

 このほど、この連載を再編集し、大幅に加筆しまして、日経プレミアシリーズより新書『新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実』として、刊行することとなりました(電子版もございます)。本日発売ですが、入荷が遅れてしまうお店があるようです。ご迷惑をおかけして申しわけございません。

 スタンフォード大学の博士研究員で「 サイエンスYouTubeチャンネル 新妻免疫塾 K&L Immunology Club」を運営している新妻耕太先生が、峰先生との対談動画で、こちらの書籍をご紹介くださいました(新妻免疫塾 ヅマの部屋「ゼロからわかる! ワクチンの基礎と新型コロナワクチン10個のポイント」)。ありがとうございます。

 そして流行再拡大と同時に、社会の分断を煽る、もしくは事態を過小に見誤らせるような言説が再びいくつも起こってきました。

 それらに流されてしまえば、ワクチンの開発に成功しても、いわゆるインフォデミック――<<information(情報)+epidemic(エピデミック)から>>ソーシャルメディアなどを通じて、不確かな情報が大量に拡散されてしまう現象(小学館デジタル大辞泉)によって、その効果が激減してしまいかねません。

 我々がこの新型コロナ禍の中で健全に生き抜くために、来るワクチン接種の前に知っておくべきこと、考えるための素材を、ド素人の私が峰先生に遠慮なしにずうずうしく聞きまくった内容を、280ページに詰め込みました。インフォデミックに対するワクチンになれば、という期待も込めて、お送りさせていただきます。より専門的な知識を得るための足がかりとしても、お役に立つかと思います。巻末には峰先生の推薦図書、情報源リストも付けました。挿絵は『築地市場』のモリナガ・ヨウさんです(「すみません、築地市場、なめてました!」)。

一番大きいのは「言葉の問題」

山中(以下、編集Y):峰先生、まずはおつかれさまでした。

峰 宗太郎(以下、峰):おつかれさまでした。校了(これ以上の修正はありません、という、最終的な確認)したのは辻堂(神奈川県藤沢市)のショッピングモールだったそうですね。

編集Y:はい、ちょうど近くで打ち合わせがありまして。こちらに入っている書店さん(くまざわ書店辻堂湘南モール店)には、峰先生のファンの方がいらして、峰先生の選書した本のコーナーができているんですね。ご挨拶に行ってきました(せっかくご用意いただいたのに、本の入荷が遅れているとのこと、ご迷惑をおかけしてすみません……)。

段取りが悪い私は、とんかつのお店で抹茶パフェをいただきつつ、アポイントまでの時間を使って校了作業を……。
峰先生の推薦図書が棚一面にずらっと並んでおりました。ここについにご著書も……左上にすでに場所とポップが用意されていました!

:いやいや、書店さんにそんなことをしていただけるなんて、本当にありがとうございます。

編集Y:ところで、Twitterや本書で推薦している本を見てもそうですし、ご発言でもそうですが、先生は常に「考え方」について話されますよね。誰それの発言だから、どういう立場の人だから、ではなく。

:はい、今回の本でも加筆させていただきましたが、「いつも正しいことを言っている人だから、今回も正しい」とは限らないわけです。過去の発言、属人的な信頼、あるいは資格や立場があるから「正しい」なんて、まったく「正しくない」と思います。

編集Y:書籍の中でも、我々メディアに対して「両論併記という名で客観性を装ったり、ノーベル賞の受賞者の発言に“逃げ”たりするのはよろしくない」と苦言を呈されてます。耳がちぎれるくらい痛かったです(汗)。

 さて、本の宣伝をしたい気持ちは山々、というか山盛りなんですが、せっかく記事枠をゲットできましたから、すこしでも読んでいる方のお役に立つお話をうかがいたいと思います。

:いいですね。何の話をしましょうか。

編集Y:インタビューさせていただく中で、印象に残っている言葉の一つに、

「歯切れのいい対策」は、たいてい「不都合な真実」を無視している

 というのがあるんです。

 新型コロナにまつわる、我々がつい「もっともだ!」と思ってしまうような対策は、専門家の視点から見ると「言葉の上ではそうだけど、実際にそれ、やれるの?」というものがほとんど。本で取り上げた例としては「高齢者を集中して隔離」とか「PCRの全数検査」もそうですね。

:はい。そして今も謎の説が次から次に生まれてきて、「ひょっとして今の対策は間違っているのではないか」という疑心暗鬼の種をばらまいています。

続きを読む 2/4 マニアと一般人では言葉の意味が違う

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