藤木:この持ち主は、親から家や土地を引き継ぎ、その処分に困っている人が日本には数多くいることも見聞きして知っていて、その人たちも自分たちのように満足いく結果となれたらよい、その一例になることができれば多少は問題解決に貢献できたことになるのではないか、と思ったそうです。

 売り手と買い手、両者が直接出会って、相手の思いを確認しながら話を進め、最終的に「この人なら」という相手を決めて売買できる。両者が満足し、お互い相手の喜ぶ姿を見て、さらに社会問題の解決にも思いをはせる。このような大きな達成感と幸せはそうないと思います。

築約90年とは思えない、大切に使われてきた家。これを再び大切に使ってくれる人に売却できた。売り主は、全国の空き家も自分のような取引ができればよいと願っている
築約90年とは思えない、大切に使われてきた家。これを再び大切に使ってくれる人に売却できた。売り主は、全国の空き家も自分のような取引ができればよいと願っている

ところで、素人同士の持ち主と購入希望者が直接商談するのは、危ない印象もあるのですが、そこはどうなんですか。

藤木:それはとても大事なところで、安全に利用できることが家いちばのコンセプトとなっています。

 例えば、個人情報を明かさずに商談を進められるシステムを提供したり、運営事務局側で常時やりとりの監視をして、違反者には退場してもらったりしています。契約書を交わす段階になれば、宅地建物取引士と司法書士を介在させて、問題が起こらないことを最優先に契約に至ります。それに、日頃から売り主や購入希望者からのあらゆる質問、相談に答えられる体制も取っています。

不動産のことを知らないのはもったいない

 とはいえ、私たちは不動産の取引の「自主自立の精神」を重視していて、「自分でやれることは自分でやろう」と言っています。

 例えば売り主から、「市街化調整区域でも問題ないのかと、空き家の購入希望者から聞かれたのですが、どう答えればいいのでしょうか?」という質問がよくあります。市街化調整区域にある物件は普通、再建築不可ですが、実態は複雑で、自治体によって昔から存在している集落などでは特例があったりします。

 こういった疑問点を私たちのほうで調べて、回答するのは難しいことではありませんが、売り主には、「役所の都市計画課に電話して聞いてみるといいですよ」とあえて自分で調べてもらうようにしています。自分で調べれば不動産のことを学べるのです。自分が相続した不動産について理解した売り主からは「大事なことを知ることができました。ありがとう」と感謝されますよ。

 ほとんどの人が不動産のことをあまり知りません。不動産の取引は、その人の人生を決めるといってもいいのにです。一般的な不動産売買の場合は、不動産仲介会社に全部お任せなので楽ですが、せっかくの学ぶ機会を逃してしまうことになっていて、私はそれをもったいないことだと思っているんです。

 売り主も買い主も、多くが不動産売買は初めてですから、最初のうちは不安でいっぱいです。どうやって相手との商談を進めていいか分からないという人もいますが、それくらい慎重に考えてちょうどいいし、最後は私たち、プロがまとめます。

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