藤木:かつてご両親と姉妹で住んでいた家ですが、ご自身も含め姉妹は家を出て、ご両親が亡くなってからは誰も住んでいない、ある渓流沿いの家を相続した持ち主がいました。彼女は、家と敷地内に大量に残された生活用品を前に、これらをすべて廃棄するためにはどれだけの手間、時間がかかることだろうと思いつつ、一応管理はしていました。

 ですがやはり時間がたつにつれ、管理は重荷になり、家の劣化も目立つようになってきたため、持ち主は売却することを決めました。このとき持ち主が思っていたのは、「このままではご近所にも申し訳ない」ということでした。

かつては家族で住んでいた家だが、子供たちは家を出て、両親が亡くなってからは空き家になっていた。残置物も多く、建物も朽ちてきていたため売却も簡単でないと思われた物件
かつては家族で住んでいた家だが、子供たちは家を出て、両親が亡くなってからは空き家になっていた。残置物も多く、建物も朽ちてきていたため売却も簡単でないと思われた物件

父が残した釣り道具も喜んで受け取ってくれた

 家いちばは、あるがままの物件情報を掲載して、それでも買いたいという人と商談を始められるサイトです。この家は増築していて、それを登記していないという不手際もある物件でしたが、持ち主はそのことも含めて、ダメ元で家いちばに情報を掲載したのです。

 すると1週間しないうちに30件を超える問い合わせがあり、希望者に物件を見てもらう内覧会を開いた後、15人から購入の申し込みを受け、自然の中にあるセカンドハウスを探していた人に売ることができました。

 その持ち主は、「父が残した川釣り道具も喜んでそのまま受け取ってくれました。この家が自分たちの家ではなくなった後も、この家を大事に使ってくれるだろうと思うと、父母も喜んでくれる気がしました」と語ってくれたのです。

 持ち主は、空き家を使ってくれる人が現れたことで、固定資産税の支払いと空き家の管理から解放されただけでなく、朽ち果てる心配も当面はなくなり、近所への心苦しさも軽くなったでしょう。何より、今は亡きご両親が喜んでくれる気がしたと晴れやかな気持ちになったことが素晴らしいと思いませんか。

 空き家は売れるし、買ってくれた人が、思い出の詰まった家を使ってくれます。その家は、今度はその買い主の思い出づくりにつながっていくんです。

なるほど。亡くなった両親の残置物や思い出もあって、管理や処分が簡単ではない物件ほどそのまま売れたときの喜びは大きいのかもしれませんね。

藤木:自分のことだけでなく、社会的な幸せを感じた持ち主もいました。

 もう皆さんご存じのこととは思いますが、空き家は毎年のように増えていて、いわゆる限界集落はもちろん、地方では中核都市の町なかでも増えつつあります。日本の人口減少の影響をはじめ、都会とつながるインフラの整備がかえって地方からの人の流出を促進したりして、この20年ほどで空き家数はほぼ倍増。一軒家の約13%、400万戸超が空き家です。

 北陸地方の小さな町の築90年近い空き家を売りに出した持ち主は、自分の家や土地に対する思いに賛同してくれ、この人に売りたいと思える購入希望者に売ることができました。買い主は、第二の人生のすみかを探し求めて千葉からはるばるやってきた人でした。

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