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 ますます社会問題化している空き家問題は、売りに出しても売れそうもないため、放っておかれている空き家が増えていることが大きな要因だ。放っておかれないための方策はないのか――。この問題に1つの解を提示し、実績を出しつつある仕組みがある。

 「家いちば」がそれだ。これは、一言で言えば、ネット上の不動産の売ります・買います掲示板。売買の商談を、売り主と買い主に任せる仕組みだ。売り主がダメ元で掲示板に掲載した空き家に購入希望者が集まり、商談が成立するのだ。

 家いちば(東京・渋谷)を設立した藤木哲也氏が、11月20日、日経BPから『空き家幸福論』を発刊、空き家問題の解決を世に問うている。今回は、お荷物になっている空き家の所有者が、空き家が売れると、なぜ、どのように幸せになれるのか、藤木氏に聞いた。

(聞き手は田中淳一郎)

この連載の前回の最後で、藤木さんは『空き家幸福論』を読んでもらえれば、空き家の売買で幸福になれる理由が分かるとのことでしたが、どういうことか、少し紹介してください。

藤木哲也氏(以下、藤木):前回は、空き家を買いたいと思う人一人ひとりに、他人には思い付かないような生活のニーズがあり、空き家を買うことでそれを満たせれば、買い主はハッピーだよね、ということは想像してもらえたと思います。サーフィン好きの人が海近の家を手に入れる事例は分かりやすいと思います。

 一方の売り主側である空き家の持ち主も、空き家が売れれば必ず幸せになれます。

「空き家の持ち主は、その空き家が売れると、固定資産税の支払いと空き家の管理から解放されるだけではない。もっと深い幸せを得られる」という藤木哲也氏(写真:清水真帆呂)

空き家は「売れる物件」に仕立てる必要がある?

 前回も少し触れましたが、日本の空き家問題の大きな要因の1つに、持ち主が空き家を放っていることがあります。

 空き家の持ち主は、「なんとなくそのまま」の人が少なくありません。「不動産仲介会社に相談すると、更地にしてください、修理してくださいなどといろいろ依頼されて、費用がかかりそうなので相談したくない」という人もいます。

 確かに不動産仲介会社に売却を依頼する場合は、残置物を処分する、家の傷んでいる箇所を修理するといった、売る側が想定する「売れる物件」に仕立てることが求められますので、持ち主が売却もおっくうだと思う気持ちも分かります。ですが、空き家は利用しない限り、税金だけがかかる、どんどん朽ちていくお荷物なのですから、売れればそれに越したことはないのです。

欲しい物件を手に入れた買い主の幸せは分かりやすいのですが、ここまでの話ですと、空き家の持ち主が幸せになるのは簡単ではない印象ですね。

藤木:ここからが本題ですが、家いちばを運営してきて、空き家が売れることの持ち主の幸せは、空き家が売れて肩の荷が下りてよかったですね、というレベルでないことを発見したのです。

 こういう話があります。空き家の持ち主の皆さん、そして近い将来、空き家の持ち主になりそうな皆さんには、ぜひ、知ってほしい話です。この話は、家いちばでの空き家売買の象徴的な事例なので、拙著の冒頭に掲載しましたが、ここで少し紹介したいと思います。