全4987文字

 30万人を突破した日本で学ぶ外国人留学生。アニメやマンガなど日本のポップカルチャーに関心を持ち、日本が大好きな人も多い。卒業後に日本企業で働くことを希望する留学生も多いが、就職活動がうまくいかなかったり、就職できたとしても短期間で辞めたりする場合が少なくない。

 そんな外国人留学生たちの実態に迫ったのが、新刊『日本を愛する外国人がなぜ日本企業で活躍できないのか? 外国人エリート留学生の知られざる本音』だ。著者である九門大士氏は、東京大学公共政策大学院の外国人留学生向けの英語コースで教えており、亜細亜大学の教授として外国人留学生について研究を続けている。

 そんな九門氏が、民間出身の校長として公立の中学校や高校で教育改革に取り組み、12月に書籍『革命はいつも、たった一人から始まる』(ポプラ社)を発売した教育改革実践家の藤原和博氏と対談した。テーマは、ダイバーシティ(多様性)を叫ぶ一方で同質化が進む日本社会、そして個人の働き方だ。「正解至上主義」で授業中に発言したがらない日本の学校教育をどうすればいいのかについて議論した第4回の記事に続き、今回は対談の最終回として「幸せな人生とは何か」について議論する。

藤原和博(ふじはら・かずひろ)
教育改革実践家。1978年東京大学経済学部卒業後、リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任後、1993年よりヨーロッパ駐在、1996年同社フェロー。2003年より5年間、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校校長を務める。16年~18年、奈良市立一条高校校長を務めた。主な著書に『校長先生になろう!』(日経BP)、『藤原和博の必ず食える1%の人になる方法』(東洋経済新報社)、『100万人に1人の存在になる方法 不透明な未来を生き延びるための人生戦略』(ダイヤモンド社)など
九門 大士(くもん・たかし)
亜細亜大学アジア研究所教授。東京大学公共政策大学院非常勤講師。東京大学公共政策大学院で外国人留学生向けに英語で「日本産業論」を教える。慶應義塾大学法学部卒、米ミシガン大学公共政策大学院修了。JETRO(日本貿易振興機構)にて中国・アジアにおける人材マネジメント・企業動向のリサーチなどを担当。中国・清華大学経済管理学院にて1年間の研修。2010年にグローバル人材育成を主業務として独立。東京大学工学部特任研究員などを経て、現職に就く。主な著書に『アジアで働く』(英治出版)など

藤原和博(以下、藤原):みんなが同質化して、同じようになればなるほど、人間は価値を失っていきます。むしろ「レアさ」がある方が価値は高まる。それでもレアな人ほど、何かに突っ込んでいったときに「振り返れば誰もいない」状況に直面します。そんなさみしさ、孤独に耐える人こそ価値がある。

 今までの幸福感は「自分が他の人より上ならうれしい」といったものでした。かつてはいい高校からいい大学、いい会社に入れば、7割がた幸せになれる社会で、課長から部長になって御の字。それで多くの人が悠々自適の生活が送れました。しかし今は30~40年働いて引退して終わりでなく、トータルで90~100年ある人生をどう生きるかが問われます。

 1つの仕事だけで人生は終わらない。「坂の上の坂」があります。そこに次の人生を重ねないといけません。1つの仕事を続けている間にコミュニティーを乗り換えていく必要があります。

 単線型というより複線型で、富士山のような一山型ではなく、八ヶ岳みたいな連峰型のイメージです。7つか8つの人生観を持つような幸福論と言えるでしょう。今の子どもたちは一気に3つの人生が進んでいくように思います。自分の居場所を作るためには、一生に10個の人生観を切り替えながら生きる人だっているかもしれません。

 60歳になってからでもあと30~40年ありますよね。それまでは全く別の人生でしたが、定年後に3つの新しい道があってもいい。その時点で持っているものを活かして生きようということです。

 例えば、今45歳で、あと50年前後の人生があるなら、慣性の法則でそれまでの生き方を続けてもだめです。スキルの棚卸しをして、どこで自分の価値を一番出していけるのかを考える必要があります。何だったら、自分の可能性があるのか。