2006年にデビューし、「ノリボケ漫才」と呼ばれる独自のスタイルで一躍人気者になったお笑いコンビのハライチ。ボケでネタ作りを担当する岩井勇気氏、ツッコミ担当の澤部佑氏ともに多才で、ソロ活動の多いコンビとしても知られるが、とりわけ岩井氏は、バラエティー番組で他の芸人がわざとらしく騒ぐさまを“お笑い風”と評するなどの言説で、お笑い界の中でも独自のポジションを確立。最近は、著書『僕の人生には事件が起きない』(新潮社)を上梓し、増刷を重ねるなど活躍の幅をますます広げている。
そんな岩井氏、一般的な芸能人のイメージに反して、大勢の人が集まるパーティーや飲み会はかなり苦手とのこと。中でも、なるべく行かないようにしているのが同窓会だという。なぜ岩井氏は同窓会に行かないのか。お笑い界きっての「若き異才」が語る人間関係論は、無意味な飲み会や会合に辟易している全国の会社人にとっても大いに参考になる。
(聞き手は鈴木信行)
まずは岩井さんと同窓会の関わりからお聞きしたいんですが、同窓会への参加に消極的になったのはいつ頃からですか。
岩井:高校時代には中学の同窓会が始まり、20歳を過ぎると高校時代の同窓会が開かれるようになりましたが、最初の頃は参加していました。ただ、同窓会が開催される頻度が高いんですよね。半年~1年に1回はありました。
そんなに。ご出身の埼玉県上尾市の土地柄なんでしょうかね。
岩井:それだけ頻度が高いと、毎回同じことの繰り返しになる。近況報告と過去の思い出話……と、出てくる話題も毎回同じなわけですよ。近況報告といっても半年前にやってるわけですからアップデートされる情報なんてほとんどない。さすがに「もういいでしょ」ってなってくる。それに、同窓会というのは「みんなが集まる場所」ですから、学生時代に仲がよくなかった人も当然、来る。
で、よく考えたら、学生時代に仲がよかったやつとは別に同窓会なんかなくても普段からそれなりに会ってるわけだから、「同窓会=仲がよくなかったやつにわざわざ会いに行く場所」ということになる。そんなの10年に1回でいいのでは。毎年、会いたくない人に無理に会いに行く必要なんかない、という話になりません?
なるほど(笑)。さすが。

1986年埼玉県生まれ。幼稚園からの幼馴染だった澤部佑氏と2005年にハライチ結成。結成後すぐに注目を浴びる。ボケが担当でネタも作っている。アニメと猫が大好き。特技はピアノ。写真:北山宏一(以下同)
「毎回同じところで笑う人々」に恐怖
岩井:じゃなんで、同窓会にわざわざ行く人がいるのか。学生時代のお調子者の男子が毎回同じようにはしゃぎ、それを見た女子が「またあいつ、馬鹿やって!」と笑う。しかも毎回、同じところで笑う。僕はむしろ怖い。それの何が楽しいのか、と。
(笑)。
岩井:たぶん若い時期から同窓会に頻繁に参加する人は、まず、「学生時代の楽しさのピークを更新できていない人たち」なんだと思います。学生の頃の思い出にずっと縛られているんじゃないかな。「今が本当に楽しい人」は、同窓会に頻繁に顔を出し、何度も何度も同じ思い出話なんてする必要もないし暇もないでしょう。
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