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 バイオベンチャー・ユーグレナの出雲充社長、実は『嫌われる勇気』の熱烈な愛読者として知られる。その出雲社長が、このたび初めて、著者の岸見一郎氏と対談した。

 テーマは、リーダーシップ。

『嫌われる勇気』を筆頭に多くの著作を持つ岸見氏だが、今年刊行した『ほめるのをやめよう』で、初めてリーダーシップを論じた。刊行に際し、経営者としてリーダーシップを実践する出雲社長に、岸見流のリーダーシップ論について意見を求め、この対談が実現した。

 しかし、本題に入る前に、出雲社長にはどうしても岸見氏に伝えたいことがあるという。

 そこで今回はプロローグ。『嫌われる勇気』から、出雲社長が特に感銘を受け、2020年の今、あらためて心に刻みたいポイントを振り返る。気鋭の起業家が投げかける、現代社会への切実な問題提起とは。

岸見:出雲さん、はじめまして。といっても、初めてという気がしないのですが。

出雲:いや、とうとう……。悩める「青年」が、ようやく「哲人」に出会えました。感激です。

岸見:実際にお目にかかるのは初めてですが、出雲さんには、あちこちのインタビューや書評で『嫌われる勇気』を取り上げていただき、お名前だけは存じていました。

出雲:ええ。この場をつくっていただいた日経BPさんには申し訳ないのですが、ずっとお会いしたいと願ってきて、やっと出会えた岸見先生に、まずお伝えしたいのは、(ダイヤモンド社から刊行された)『嫌われる勇気』という本への感謝なのです。

出雲流『嫌われる勇気』の読みどころ

出雲:今年は新型コロナウイルス感染症の流行がありましたが、『嫌われる勇気』が刊行された2013年以来、社会に大きな変化や危機が起きるたび、私はいつも『嫌われる勇気』という本に助けられてきました。だから、今日はどうしてもそのお礼から、お伝えしたい。

出雲社長と『嫌われる勇気』については、こちらの「PRESIDENT Online」の記事などが詳しいと思いますので、ご興味のある方は、ご参照ください。

 ほかのインタビュー記事なども拝見すると、特に感銘を受けたポイントは、次の2つ。いわば「出雲社長が考える『嫌われる勇気』の読みどころ」です。

【1】 「原因論」ではなく、「目的論」
【2】 「共同体感覚」

出雲:ええ、『嫌われる勇気』になぞらえれば、「青年」たる私は今日、「哲人」である岸見先生と、この2点から対話を始めたいのです。

岸見一郎(きしみ・いちろう)
1956年、京都生まれ。哲学者。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学(西洋哲学史専攻)。著書に『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』(古賀史健氏と共著、ダイヤモンド社)、『生きづらさからの脱却』(筑摩書房)、『幸福の哲学』『人生は苦である、でも死んではいけない』(講談社)、『今ここを生きる勇気』(NHK出版)、『老後に備えない生き方』(KADOKAWA)。訳書に、アルフレッド・アドラー『個人心理学講義』『人生の意味の心理学』(アルテ)、プラトン『ティマイオス/クリティアス』(白澤社)など多数。
出雲充(いずも・みつる)
ユーグレナ社長 1980年生まれ。東京大学農学部卒。2002年、東京三菱銀行入行。2005年8月、ユーグレナを創業。同年12月、微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の食用屋外大量培養に世界で初めて成功。起業を志すきっかけとなったのは、東京大学に入学した1998年、インターンシップで訪れたバングラデシュで「日本では出会うことのない、しかし世界に確実に存在する本当の貧困」と出会い、衝撃を受けたこと。ユーグレナ由来のバイオ燃料の開発などでも注目を集める。