自然エネルギーを活用した太陽光発電と言えば聞こえはいい。そんな、SDGs味を感じるキーワード。だが本誌が『新疆ウイグル自治区で強制労働の疑い 太陽光パネルに人権侵害の影』と報じたように、光を受けるパネルの裏側は、まだまだ課題が多い。それは、生産現場だけでなく、ソーラーを設置した里山の景観悪化や防災観点からの警鐘をはじめ、ネガティブなニュースもメディアをにぎわせている。

 こうした地方の新たな課題となっている太陽光発電が、『その農地、私が買います 高橋さん家の次女の乱』で描かれている。書いたのはロックバンドとして人気の高いチャットモンチーの元メンバーである高橋久美子さんだ。愛媛県出身で現在東京と愛媛の2拠点で活動する高橋氏。廃業する農家が多い中で、流れに逆行し、ソーラーパネルを設置するぐらいならと畑を買って仲間と農業を始める。実際に農業を始めて分かった獣害の大変さ、農家を農地に縛る法律、そして、足並みをそろえることを最優先しがちな地域の閉塞(へいそく)感。ミクロな事象から日本全国で起きているソーラーパネル問題や中小農家の課題までを聞いた。

<span class="fontBold">高橋 久美子(たかはし・くみこ)さん</span><br> 作家・詩人・作詞家。1982年愛媛県生まれ。音楽活動を経て2012年より文筆家に。小説、エッセイ、絵本の翻訳、アーティストへの歌詞提供など幅広く活動。また、農や食について考える「新春みかんの会」を主催する。著書に小説集『ぐるり』(筑摩書房)、エッセイ集『旅を栖とす』(KADOKAWA)、『いっぴき』(ちくま文庫)、詩画集『今夜 凶暴だから わたし』(ちいさいミシマ社)、絵本『あしたが きらいな うさぎ』(マイクロマガジン社)など。(写真=稲垣純也)
高橋 久美子(たかはし・くみこ)さん
作家・詩人・作詞家。1982年愛媛県生まれ。音楽活動を経て2012年より文筆家に。小説、エッセイ、絵本の翻訳、アーティストへの歌詞提供など幅広く活動。また、農や食について考える「新春みかんの会」を主催する。著書に小説集『ぐるり』(筑摩書房)、エッセイ集『旅を栖とす』(KADOKAWA)、『いっぴき』(ちくま文庫)、詩画集『今夜 凶暴だから わたし』(ちいさいミシマ社)、絵本『あしたが きらいな うさぎ』(マイクロマガジン社)など。(写真=稲垣純也)

中小農家というのは、作物収入によりある程度経済的自由があると思っておりますが、実態はどうなんでしょうか。

高橋久美子氏(以下、高橋氏):若い世代はネットなどを駆使して販売している方も増えていますが、大農家さんに比べたら農業だけで生活するのは難しいと思います。私の家も含めて自分の家族や親戚が年間食べるお米や野菜を作ることを目的にされている方が多いですね。市場へ出す場合はJA(農業協同組合)を通じた取引が私の周りでは大半ですが、良い作物を作っても、スーパーなどでは一律の値段で販売されることが多く、小規模農家だと取れ高が少ない分たくさん稼ぐのは難しく、それでもやっぱり農機具はそろえることになるし、そのメンテナンス代もばかになりません。それから、最近の自然災害の多さ、獣害による被害も厳しさに拍車をかけていると思います。

 だから、父の世代なんかは、農業を嫌々継いでいる人が多くて、結局辞めたなあという声もよく聞きますねえ。妹が父に「農業を始めたい!」と相談すれば「企業で働きなさい」と反対してました。天候に左右されることを骨身に染みて感じているがゆえだと思います。父がついに実家の田んぼをパネル業者に売ったと聞き、それをとがめたら、「農地なんかないほうがええ。お前は東京いね(帰れ)!」と(笑)。 

 まあ確かに東京の私が出ていく権利がないのもよく分かるのですが。

 うちの場合は、飛び地的に農地を持っていて全部集めると中規模農家に入ると思います。そこまでトラクターを運ぶだけでも一苦労。田んぼの毎日の水かけや夏の草刈りも何カ所も回らないといけないので非効率的ではありますね。でも、段々に田んぼが広がる風景は美しいんですよ。

 高齢化の農村地でそれをどうやって維持するのかということにみんな直面しています。子どもたちの多くは都市に出ていたり、地元に残っていても苦労が目に見えたりしているから、親が継がせたくない家も多いですね。これは愛媛に限らず、多くの中小規模農家が抱えている悩みではないでしょうか。

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