Zアカデミア学長や武蔵野大学アントレプレナーシップ学部の学部長として活躍する伊藤羊一氏。ビジネス書でも数々のヒット作を出版。直近ではリーダーシップとマネジメントをテーマとした『FREE, FLAT, FUN これからの僕たちに必要なマインド』を上梓(じょうし)。幅広い活動と発信を続ける伊藤氏の知られざるキャリアやアイデンティティーを紹介していただきます。

輝かしいキャリアとは言われるが・・・

 人に話すと驚かれたり、意外と言われたりすることが多いのですが、若いときは本当に場当たり的に生きていました。何も考えずに他人が敷いたレールを進むような人生を歩んできました。

 例えば大学を決めるとき、皆さんは多少なりとも人生で「こういう人になりたい」「大学でこういった研究をしたい」といった目標を持って受験されたかと思います。ですが、私自身にはそういった目標・目的が1mmもありませんでした。

 当時の私は、「文系で一番偏差値の高い大学ってどこだろう。ふむ、東京大学という大学か。文科一類(法学部)というところは偏差値が高くて自分は入れないな、次は文科二類(経済学部)というところか。じゃあそこで」と、喫茶店でコーヒーを頼むかのごとく気軽に決めました。法学部じゃ無理だから経済学部って、今から考えると完全に意味不明なんですが。

 就職も同じ。就活が始まってもどうしたいという考えが浮かばない。社会や国に貢献したいという高いモチベーションの学生が周囲にいましたが、全く影響を受けませんでした。ゼミの仲間の多くが日本興業銀行というところを志望するから自分もそうしとくか。興銀って政府系の銀行だよな、と勘違いしていたくらい物事を知らず、周囲の流れに流される、そんな進路の決め方でした。

 こんな人生観になった理由の一つは、中学時代にありました。

 中高一貫の受験校「麻布中学」に進学したのですが、校風は「とにかく自由である」ということが特徴です。小学校の伊藤少年は、勉強ができました。でも、入学した麻布中学は数あるトップ受験校の一つですから生徒全員の頭がいい。その中で、「成績の優秀さ」の観点では自分は埋もれてしまい、どんどん自信がなくなっていくのです。そこで一念発起して立ち上がるモチベーションも湧かず、未来に関して前向きに思うことをやめてしまったんです。

 さらに、中学時代に入ったテニス部を、高校1年生の時に「クビ」になってしまいました。テニスは大好きで一生懸命練習するのですが、練習は基本、他のテニスクラブでしており、学校のテニス部にあまり出席しなかったからなのですが、このときには、お先真っ暗になりました。

 高校1年にして、世捨て人のような気分になったのです。

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