アートは「分岐点」を超えることができる
長坂 アートは、縦軸と横軸が交差する分岐点を超えることができる。貧困国から日本という先進国にゴミを運んで制作することによって、価値が生まれることが分かったんです。アグボグブロシーの人々の貧困がひどいものであればあるほど、彼らの願いをビジュアル化した僕の作品は、先進国で高額で売れる。もし、僕が秋葉原のゴミで作品を作っても、数十万円ぐらいにしかならないはず。
斎藤 作者の才能自体は根本的に変わらないのに、と。
長坂 そう。その後に2000万円で売れた絵の価値を分析してみると、自分でも確かに200万円ぐらいの値打ちはあると思った。通常のギャラリービジネスは画家と画廊が売り上げを折半するので、僕に入るのは100万円のはず。2000万円で売れたということは、つまり20倍のレバレッジがかかっていることになる。その数字から僕の美術家としての適正なギャラは5%と判断したのです。
斎藤 残りはガーナのスラム街の雇用創出や環境改善の事業に投資しようと。
長坂 そうです。もちろん、税金などがありますから、残りの売り上げすべてを投資に回すわけにはいきませんが。この5%という数字を変えた瞬間、僕の活動は斎藤さんがおっしゃるように資本主義にのみ込まれてしまいますから。
※近日公開の(2)へ続く。
ガーナの電子ゴミを10億円に変える 話題の美術家 長坂真護氏。現地に私設の学校、美術館、リサイクル工場を設立。枠にとらわれず活躍の場を広げる長坂氏の目に映る「資本主義の先」とは―。SDGsの“次の取り組み”に未来へのヒントがある!
→書籍の詳細はこちらから発行:日経BP 定価:1870円(税込み)
取材・文/吉井妙子 構成/市川礼子(日経xwoman ARIA) 写真/洞澤佐智子 画像提供/MAGO CREATION
[日経xwoman 2022年11月11日掲載]情報は掲載時点のものです。
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