岸見:相談者の話に戻れば、その部下が高い能力を持つのであればなおのこと、上司であるあなたは、その能力を伸ばしていかなくてはいけないわけです。

 部下が思うような成果を上げられないのを、「部下の問題」と捉えるのではなく、指導している「私の問題」なのであって、私の指導法には改善の余地があると捉える。少なくとも「私たちの問題」であると考えるべきでしょう。

そのような「私の指導法の問題」に気づいたとき、どうすればいいのでしょうか。

岸見:上司から部下に、どう働きかけたらいいか。こういう言い方はできると思います。

 「最近のあなたの様子を見ていると、仕事で十分に能力を発揮できていないようだが、そのことについて一度、話をしたい」

 そのように言って、部下に相談していかないといけません。けれど、山崎さんも読者の皆さんも十分にお分かりと思いますが、そういう言い方を、すごく嫌なものと受け取る人がいるでしょう。

一周回って、やっぱり人間関係

言われる部下も嫌かもしれませんが、厳しいことを言いにくいと感じる上司もいるはずです。

岸見:「最近のあなたの働きぶりはあまりよくない」と、上司が部下に言ったら、どうなるでしょう。

 子どもだったら、反発します。子どもが最近の成績のことで、親や教師に「このままではダメじゃないか」「このままだったらどうなると思う?」というようなことを言われれば大抵、反発します。自分でも分かっているからです。自分でも「勉強しなければならない」と分かっているときに、親や教師にそのようなことを言われたら、自分に対する「皮肉や威嚇、挑戦」であるとしか、なかなか受け止められません。

 ただし、それはあくまで、親子関係が悪ければ、です。

 親子関係が良ければ、「このままだったら、どうなると思う?」と言われても、子どもは、それを皮肉や威嚇、挑戦と受け止めない。

 この点は、上司・部下の関係も同じです。そのような関係を、親は子どもと、上司は部下と、築いていかなくてはいけない。

なるほど。

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