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岸見:親子関係においては、例えば、子どもが勉強しないとしても、それはすべて子どもの責任であり、親の責任ではありません。成績が上がらないのは、子どもが勉強しないからであって、勉強という子どもの課題に対して、親は一切、手出し、口出しする必要はありません。

アドラー心理学における「課題の分離」ですね。

岸見:これ(課題の分離)ができたら、親子関係はすごく楽になります。子どもが勉強しなくても、親は一切、口出しする必要はないですし、子どもの成績が悪くても、親は一切、気に病む必要はないのですから。

 私自身、子どもたちに「勉強しなさい」と言ったことはありません。親が「勉強しなさい」と言わなくても、子どもたちはそれぞれ自分で判断し、熱心に勉強したり、あるいは勉強よりほかのことに関心を示したりしながら、学生時代を過ごしました。

 いずれにせよ、勉強する、しないは子どもたちの課題であって、親の口出しすることではないですね。仮に、成績がどんどん下がったとしても、それに親が関わる必要はないのです。

「うちの子」の成績なら、切り捨てていいけれど

岸見:しかし、職場において、部下の成績が伸びないとか、部下が失敗ばかりしているということであれば、これを「部下の課題だ」と、部下を切り捨ててはいけません。部下と上司の「共同の課題」にしないといけません。

 学校の先生も同じです。学校の先生にも「課題の分離」は通用しません。

 例えば、学校の先生があるとき、娘さんの成績表を片手に家庭訪問にやってきて、「この成績表を見るとどうやら、おたくの娘さんは、私の授業についてこられないようです。だから、塾にやらせてください」と言ったら、どうでしょう。今の先生たちは家庭訪問なんてしていないかもしれませんし、仮にしていたとして、そんなことをする先生などいないかもしれませんが。

 娘さんが学校の授業についていけていないのであれば、それは本来、先生の指導法に問題があるので、先生がきちんと生徒に分かりやすい授業をすれば、生徒の成績は伸びるはずです。だから、自分の授業を棚に上げて、塾にやらせてください、というのは本末転倒です。

 職場でも同じです。