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岸見:これは、どちらがいいとか悪いといった話ではありません。

 ただ、対人関係型のリーダーの中には、「こういうことを言ったら、本人のプライドが傷つくのではないか」と思うあまり、仕事の上での失敗であっても、それを部下に指摘することが難しい、と感じる人がいます。

私もどちらかというと、そちらのタイプかもしれません。

岸見:仕事の上での失敗ならば、本来、人間関係は二の次、三の次にしていいのです。上司が部下の失敗を指摘することに逡巡(しゅんじゅん)する必要はありません。仕事の上のことだと割り切って、本人のプライドとは無関係に「これは失敗である」と言わなくてはいけません。

 けれど、対人関係を気にするタイプの上司はどうしても、そこで矛先が鈍ると言いますか、言いよどんでしまうことがあります。

 失敗と同様、部下が自分の力を十分に伸ばせていないときにも、そのことについて上司は、きちんと部下に説明していかないといけません。これが一つ。

部下の伸び悩みは、上司の責任

ほかに、どんな問題があるのでしょうか。

岸見:もう一つは、リーダーに対して厳しい言い方にはなりますが、「部下が十分に力を発揮できていないとすれば、それは上司の責任である」ということです。要するに教育が足りない、きちんと指導できていない、というわけです。

確かに、そうですね。

岸見:上司が自分のことを棚に上げて、部下の能力や努力の不足を責めるというのは、自分を責めていることに等しいということに、気づかないとなりません。

なるほど。部下を「無能」と言った瞬間、上司としての自分の無能を認めていることになるのだと。

岸見:これは、上司・部下の関係が、親子関係と大きく異なるところです。上司・部下の関係においては「課題の分離」が通用しません。