感染症は、人間の生きる世界をいかに変えてきたのか?

 歴史学者である、東北大学大学院経済学研究科の小田中直樹教授が、この問いに答えるのが、『感染症はぼくらの社会をいかに変えてきたのか ― 世界史のなかの病原体』。ポストコロナを予測する材料を世界史のなかに探し、分かりやすく整理して読者に提供することを目指した。

 願わくば、本書を起点に、読者に自分の関心やニーズに即して「その先」を探求してもらいたい。

 そんな思いから今回、小田中教授と議論していただいたのが、ジャーナリストの池上彰氏と増田ユリヤ氏。今年4月28日、コロナ禍を受けて感染症の歴史を振り返る共著『感染症対人類の世界史』(ポプラ社)をいち早く刊行。7月には、コロナ禍がもたらす経済危機の乗り越え方を歴史に学ぶ『コロナ時代の経済危機』(ポプラ社)も共著で刊行している。6月には、YouTubeチャンネル「池上彰と増田ユリヤのYouTube学園」を開設し、「教育系ユーチューバー」として、国際情勢の分析など情報発信を続けている。


YouTubeチャンネル「池上彰と増田ユリヤのYouTube学園」
YouTubeチャンネル「池上彰と増田ユリヤのYouTube学園」

 そんな2人に、小田中教授が、ぜひ尋ねたいこととは?

 下記の5つのテーマを用意し、議論の場に臨んだ。

1. 感染症と「気候変動」
2. 感染症と「都市化」
3. 感染症と「移動手段の発達」
4. 感染症と「社会階層構造」
5. 感染症と「人々の感情」

 前回の「気候変動」に続き、今回は、感染症と「都市化」の関係から、「社会階層構造(格差)」に議論を広げる。

(構成/小野田鶴)

小田中直樹(以下、小田中):歴史を振り返ると、感染症の流行と都市化は、密接に関係しています。

 拙著『感染症はぼくらの社会をいかに変えてきたのか ― 世界史のなかの病原体』にも書きましたが、ヨーロッパにおいて都市化が始まった14世紀ごろから、各地で結核の流行が見られるようになりました。その結核が、「時代の病」になるのが19世紀。産業革命によって工業都市が出現した時期です。19世紀にはコレラの感染爆発もあり、その後、ヨーロッパの各都市で、感染予防対策の狙いもあって上下水道が整備されるなど、都市改造が進みました。

つまり、都市の出現が感染症の流行を引き起こし、感染症の流行が予防策としての都市インフラの整備を促進したのですね。

<span class="fontBold">小田中直樹(おだなか・なおき)</span><br> 東北大学大学院経済学研究科教授。1963年生まれ。86年、東京大学経済学部卒業、91年同大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。博士(経済学、東京大学)。研究分野はフランス社会経済史(スクリーンショット:栗原克己)
小田中直樹(おだなか・なおき)
東北大学大学院経済学研究科教授。1963年生まれ。86年、東京大学経済学部卒業、91年同大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。博士(経済学、東京大学)。研究分野はフランス社会経済史(スクリーンショット:栗原克己)

19世紀コレラと21世紀コロナの共通項

増田ユリヤ(以下、増田):都市化は地球温暖化も促進します。そして、地球温暖化もまた新たな感染症の流行を生むというのは、前回の通りです。

池上彰(以下、池上):しかし、新型コロナの流行でリモートワークが広がると、都市化が抑制され、温暖化も抑制されるかもしれません。

コレラと都市インフラ整備の関係と、ちょっと似ている感じもします。

<span class="fontBold">増田ユリヤ(ますだ・ゆりや)</span><br> 神奈川県生まれ。國學院大學卒業。27年にわたり、高校で世界史・日本史・現代社会を教えながら、NHKラジオ・テレビのレポーターを務めた。日本テレビ「世界一受けたい授業」に歴史や地理の先生として出演のほか、コメンテーターとしてテレビ朝日系列「グッド! モーニング」などで活躍。日本と世界のさまざまな問題の現場を幅広く取材・執筆している(写真:栗原克己)
増田ユリヤ(ますだ・ゆりや)
神奈川県生まれ。國學院大學卒業。27年にわたり、高校で世界史・日本史・現代社会を教えながら、NHKラジオ・テレビのレポーターを務めた。日本テレビ「世界一受けたい授業」に歴史や地理の先生として出演のほか、コメンテーターとしてテレビ朝日系列「グッド! モーニング」などで活躍。日本と世界のさまざまな問題の現場を幅広く取材・執筆している(写真:栗原克己)
<span class="fontBold">池上彰(いけがみ・あきら)</span><br> 1950年、長野県生まれ。慶応義塾大学卒業後、NHKに記者として入局。事件、事故、災害、消費者問題、教育問題等を取材。2005年に独立。名城大学教授、東京工業大学特命教授。海外を飛び回って取材・執筆を続けている(写真:栗原克己)
池上彰(いけがみ・あきら)
1950年、長野県生まれ。慶応義塾大学卒業後、NHKに記者として入局。事件、事故、災害、消費者問題、教育問題等を取材。2005年に独立。名城大学教授、東京工業大学特命教授。海外を飛び回って取材・執筆を続けている(写真:栗原克己)
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