「テンゼロ」論はロジックをすっ飛ばして楽をする方法論の代表例

論理的な破綻や錯誤もすぐにわかる?

楠木:ごまかしも見えてきます。例えば、「Society 5.0(ソサエティ5.0)」といったような「テンゼロ」という言い方。テンゼロはロジックをすっ飛ばして楽をする言説の典型です。何も考えてなくても、1つバージョンを上げるだけで、何か新しいことを言っているように見えます。

 同様に、物事を不明確にする言い回しとして、「違和感」が挙げられます。これもロジックをすっ飛ばしてしまう方法論。「まちがっていると思う」というと、「なぜか?」と問われるので、ロジカルな答えが必要となります。ところが「違和感がある」という言い方をすると、半分否定しているようで、半分は自分の感覚という逃げ道になっています。「残念」という言葉の多用もこれと似ています。残念な人、残念な出来事──これも主観への変換で、ロジックが不要になる例です。最近は、こうした例が多く、逆に言うと、ロジックなしで済ませられる技法の体系のようなものが社会にはあって、発達し続けているとも言えます。

 どうやったら、ロジックを回復できるか、というのが、この時代の重要な課題だと思っています。スマホに、とても短い時間に、どんどん情報が飛んでくる時代に、ロジックを組み立てていく体験は、むしろ新しい学びになると思っています。面白がれれば、いくらでも思考が進む。自分の会社の社史を読んで、逆・タイムマシン経営論を実践することも可能なのです。

 「飛び道具トラップ」「激動期トラップ」「遠近歪曲トラップ」。経営を惑わす3つの「同時代性の罠」を回避せよ! 近過去の歴史を検証すれば、変わらない本質が浮かび上がる。戦略思考と経営センスを磨く、「古くて新しい方法論」。『ストーリーとしての競争戦略』の著者らの最新作!

 これまで多くの企業が、日本より先を行く米国などのビジネスモデルを輸入する「タイムマシン経営」に活路を見いだしてきた。だが、それで経営の本質を磨き、本当に強い企業になれるのだろうか。むしろ、大切なのは技術革新への対応など過去の経営判断を振り返り、今の経営に生かす「逆・タイムマシン経営」だ。

 経営判断を惑わせる罠には、AIやIoT(モノのインターネット)といった「飛び道具トラップ」、今こそ社会が激変する時代だという「激動期トラップ」、遠い世界が良く見え、自分がいる近くの世界が悪く見える「遠近歪曲トラップ」の3つがある。

 こうした「 同時代性の罠 」に陥らないためには、何が大事なのか──。近過去の歴史を検証し、「新しい経営知」を得るための方法論を提示する。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。

この記事はシリーズ「Books」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。