グローバルで累計10億ダウンロードを突破した人気ゲームの「ポケモン GO」で世界規模の社会現象を巻き起こし、任天堂とのピクミンをテーマにした新作も発表。開発・運営を手がける米ナイアンティックは、どんな発想で作品を生み出し、世界中の人々を動かし続けているのか。

 同社副社長、川島優志氏が激動の半生を振り返りながら、「ナイアンティック」や「ポケモン GO」、「イングレス」の舞台裏を語った『世界を変える寄り道 ポケモンGO、ナイアンティックの知られざる物語』が10月に発刊された。

 著者の川島氏に、「ポケモン GO」を通してナイアンティックが目指している世界や、「ポケモン GO」が世界中の人々に受け入れられた理由などを聞くシリーズの第2回。今回は世界が熱狂の渦に包まれたサービス開始時の体験と「寄り道」を重視する理由について語ってもらった。

(聞き手は日経トップリーダー編集 上岡 隆)

前回は、「ポケモン GO」のアメリカ版を開始する際、川島さんがローンチボタンを押すというエピソードまでうかがいました。その後、「ポケモン GO」は、2016年7月22日に日本でもサービスが開始されました。それからは連日連夜、街のあらゆる場所で、「ポケモン GO」をプレーする人であふれました。テレビのワイドショーや情報番組でも「社会現象」としてたくさん取り上げられましたよね。作っている側として、「とんでもないゲームを生み出した」と感じませんでしたか。

川島優志氏(以下川島氏):「人が外に出れば、世界は変わる」というナイアンティックの思いが、「ポケモン GO」を通して現実になったということに、僕だけでなくチームのメンバー全員が、とても驚きましたし、感動しました。

 実際、サンフランシスコも街中にプレーヤーがあふれて、日本も公園にすごい数の人が集まって……。そんな状況に、驚きや感動を覚えたと同時に、一方で「恐ろしさ」も感じていました。多くの人に外に出てもらい、街を楽しんでほしいという思いがありましたが、例えば、公園の大きさは、街の人全員が集まれるようにデザインされていません。何百人という数ならまだしも、それが何千人、何万人にもなったら、どうなってしまうのか……。

<span class="fontBold">川島優志(かわしま・まさし)氏</span><br>米Niantic, Inc.副社長。早稲田大学中退後、2000年に渡米。ロサンゼルスでの起業、デザインプロダクション勤務を経て、2007年Google入社。アジア太平洋のウェブデザインチームを統括し、日本人としては世界で初めて「Doodle」(Googleのトップページロゴ)をデザインする。2015年にNiantic, Inc.(ナイアンティック社)の設立と同時に、アジア統括本部長に就任。2019年副社長に。「イングレス」のビジュアルおよびUXデザインを担当したほか、「ポケモン GO」では開発プロジェクトの立ち上げを担当。
川島優志(かわしま・まさし)氏
米Niantic, Inc.副社長。早稲田大学中退後、2000年に渡米。ロサンゼルスでの起業、デザインプロダクション勤務を経て、2007年Google入社。アジア太平洋のウェブデザインチームを統括し、日本人としては世界で初めて「Doodle」(Googleのトップページロゴ)をデザインする。2015年にNiantic, Inc.(ナイアンティック社)の設立と同時に、アジア統括本部長に就任。2019年副社長に。「イングレス」のビジュアルおよびUXデザインを担当したほか、「ポケモン GO」では開発プロジェクトの立ち上げを担当。

 「ポケモン GO」は想像をはるかに超えたブームになり、予想もつかない事態が世界のいくつかの場所で起こりました。これまでそれほど人がいなかった場所に急に多くの人々が集まることもあり、さまざまな課題が浮き彫りになりました。住民の方々などにご迷惑をおかけしたこともありました。大変反省しています。

 それは本当に未曽有の事態で、ARゲームの「イングレス」で数多くの経験を積んできた我々チームも、過去に経験したことがないものでした。起きている一つひとつの問題に対し、丁寧に向き合って対処しよう。そういった気持ちで取り組んでいました。

 具体的には、どんな場所で問題になりやすいか、また、どうすればその問題を解決できるのか。それらを考えながらプロダクトに速度制限を加えたり、ポケモンの出現方法を変えたり、ログイン時に確認の画面を出したりして、できる限り安全にプレーできるよう改善を重ねていきました。

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