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三橋:科学知のステータスが高まり過ぎている気がします。僕は科学知のほうをやっているので、それで不利益を被ることはほとんどないのですが、常に健全に批判されないと、間違った方向に行ってしまうのではないかとも思うのです。

白か黒かの二択になってしまうのは危険ということですね。アカデミアの外にいる私たちはこれまで、いわゆる自然科学以外の科学知にあまりに関心や耐性がなかったのかもしれません。これからが、科学知との付き合い方を学ぶフェーズになるのでしょうか。

三橋:人文知、科学知、双方のバランスが大事なのでしょう。企業経営でもバランスが大事ですよね。 結局、世の中ってバランスが大事じゃないですか。

 問題は、そんなに簡単に、数字に支配されてきた世界が、文化の支配する世界に変われるのか、という点です。

 文化から数字へは案外楽に転換できるかもしれませんが、数字だった世界から文化の世界に行くのは、恐らくとても大変なのですよ。文化から数字に行くほうが楽で、数字から文化に行くほうが難しいと思うのです。

「理科系→文科系」の移行のほうが難しい?

そうですか? 文系の数理系に対する苦手意識のほうが、克服し難い気がしますけれども。

三橋:なぜかというと、数字の世界にいた人が文化に行くと、その根拠は何ですか、エビデンスは何ですか、と、きっと聞きますね。聞かれたほうは、そんなものあるわけがない。「思い」だよ、ということになるじゃないですか。でもそこで、お金がかかっているから、思いだけじゃできませんよ、と言うと、数字の世界が勝ってしまう。

 そうしたことがたびたび起こると、恐らく、文化、数字、文化、数字、と振り子を振りながらも、やがては結局、数字偏重に行き着いてしまいかねないと思うのです。数字があったほうが本当っぽいじゃないですか。

まあ、私たち記者も「数字を出してください」とつい言ってしまうんですけれど……

三橋:そう、出せと言いますよね。そこから問題なのですよ、実は(笑)。

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