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正しい現状認識が欠けているから危機感がない

九門:衝撃的なデータですね。それでも日本ではあまり話題になっていません。むしろ自分たちは世界トップクラスの先進国で豊かな国だと思っている人が今でも多いように思います。

出口:絶対水準で見ると日本は貧しい国です。僕はそんなに多くは望みませんが、かわいい孫が2人います。ですから、せめてG7で真ん中あたり、アジアでもトップ5には入ってほしいと思います。

 今、日本がどのようなステータスにあるのか。正しい現状認識が欠けているから危機感が生まれないのです。世界の名目GDPに占める日本のシェアは急激に落ちています。1990年代半ばには2割弱ありましたが、2018年には5.7%と、半分どころか3分の1以下になりました。IMDの国際競争力ランキングでは1位から34位にまで転落しました。

 平成元年(1989年)の世界の株式時価総額ランキングでは、トップ20社のうち14社が日本企業でした。今はゼロで、日本企業でトップのトヨタ自動車ですら46位です。この調子ではトヨタも50位以下に落ちるでしょう。平成元年から現在までの約30年の変化を見ると、GDPのシェアが激減し、国際競争力は1位から34位になり、世界の時価総額ランキング上位50社に1社しか入っていない。こうした現状を直視しないと何も始まりません。

九門:なぜ日本の国際競争力はここまで凋落してしまったのでしょうか。

出口:原因分析もあいまいなままです。「デフレがすべての原因である」という人がいます。(安倍政権は)日本銀行がインフレ(物価上昇)率が2%になるまで、無制限に金融緩和を実施するといった政策を取りました。

 この結果どうなったのかは一目瞭然です。何よりも象徴的なのは、旗をふった浜田宏一・イエール大学名誉教授(元内閣官房参与)が転向したことです。現在ではMMT(現代貨幣理論)を借用して、とにかく物価上昇率が2%に達するまで財政出動をすればいいといった考え方に変容しています。

 しかしデフレが諸悪の根源という考え方は本当に正しいのでしょうか。僕は経済学を勉強したことがない素人ですが、歴史を見ると、発展する社会や国には新しい産業が相次いで生まれています。この30年間で日本の企業を押しのけたのはGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)やBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)、その予備軍であるユニコーンです。