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【第2の軸】 大御所 vs. 気鋭

 昔からその名を知られた大物学者か、あるいは、最近になって注目を集めるようになった、比較的若い気鋭の研究者か。本書は、その両方によく目配りした人選がなされている。そのなかで見逃せないのは、本書が取り上げるのが「ただの大御所」「ただの気鋭」ではない、ということだ。 

大御所なら、誰でも偉いのか?

 本書の特徴の一つは、大御所ならば誰でもいいというわけではなく、「アップデートを続ける大御所」に絞りこんでいるところだ。

 大御所というと、何か「終わった人」のようなイメージを抱く人もいるかもしれない。そのような大御所も現実にはいることを私は否定しない。しかし、本書におけるマイケル・ポーター教授、フィリップ・コトラー教授、ヘンリー・ミンツバーグ教授などの論考を読めば、その考えは一変するはずだ。時代の変化を鋭く捉え、既に高い評価を得ている自らの理論をアップデートし、現代でも知的刺激と実践に役立つ示唆に満ちた論考を提供する。そのダイナミックな知のあり方には、興奮と尊敬の念を覚える。

 一方の「気鋭」も単なる若手ではなく、「真の実力者」を厳選しているのが本書のすごみといえる。誤解を恐れずに言えば、気鋭の研究者は「有象無象」の世界だ。実力を伴わないうちに、ちょっとした偶然から注目を集めてしまう若手もいるかもしれない。そのような混沌とした中から、アカデミアの世界でしっかりとした実績を残している研究者、あるいは実務の世界で本当に評価されている若手を選んできているのは、さすがとうなるところだ。

 ゆえに本書を理解する軸としては、「大御所 vs. 新進気鋭」というだけでは言葉が足りない。ここでは「アップデートを続ける大御所 vs. 気鋭の実力者」と表現したい。