全6395文字

(2) 各研究者の現在の立ち位置による整理

 さて、もう一つの整理は各研究者の立ち位置だ。筆者はアカデミアにいるので事情が分かっているつもりだが、経営・ビジネスの研究者や経済学者と言っても、その立ち位置は人によって異なる。実は今回の17人も、学界におけるその個性や立ち位置は異なっており、そのような背景を理解したうえで本書を読んでいただくことで、本書の醍醐味をより深く味わえるのではないかと考える。こちらは(1)以上に、私感が強いかもしれないが、ご容赦いただきたい。

「世界標準のビジネス系研究者」のマトリクス

 私としては、以下の2つの軸でこの17人を整理すると皆さんに分かりやすいのではないかと考える。

【第1の軸】 アカデミアvs. 実務

 経営・ビジネスに関わる研究者には2つの相反する方向性がある。

 まず、アカデミア・学界への貢献を重視する方向性だ。理論を磨き、統計分析などの手法も駆使しながらそれを検証し、質の高い学術論文を一流の学術誌に投稿し、掲載されることを目指す人たちだ。自身の知的好奇心を満たし、学界で注目を浴びて成功を目指すパターンだ。とはいえこういう研究者の知見も長い目で見れば、やがて多くの研究者・実務家から多く引用・参照されるようになり、社会によいインパクトを与えることもあるだろう。

 もう1つの方向性は、実務への直接的な貢献を重視する方向性だ。例えば、ビジネススクールの教壇に立ち、実業界の未来を担うエグゼクティブを教育する。実務に使えそうなフレームワークを提供したり、企業におけるケースを分析して書いたりする。あるいは、民間企業に助言やコンサルティングをすることで、現実のビジネスをよりよいものに変えていくことを目指すスタンスの方々だ。

 両方とも価値ある貢献だが、1人の研究者がこの2つを両立させることは、現実には非常に難しい。私の場合、米国の大学に所属していた2013年まではきわめてアカデミア寄りだったが、日本に帰国してからこの7年はかなり実務寄りにシフトしてきた。その経験からも、アカデミアへの貢献と実務貢献のバランスをとる難しさは痛感するところだ。

 逆に言えば、いかなる知の巨人といえども、基本的には「アカデミアへの貢献」と「実務への貢献」のどちらかに比重を置くことになる。研究者の言説に触れるとき、どちら寄りの立ち位置にいるかを念頭に置くことは、少なからず理解の助けとなるはずだ。