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 しかし本書は、広範に経営学者・経済学者と付き合ってきた「ジャーナリスト」である広野氏だからこその視点で、ビジネスに示唆のある最高峰かつ最先端の論考を、研究領域の垣根を超え、大御所か気鋭か、アカデミア寄りか実務寄りかといった違いにまったく忖度(そんたく)することなく、1冊にまとめて網羅してしまったのだ。

 このような本は、世界を見渡しても他には恐らくない。唯一無二の1冊だ。登場する17人の人選は、「ビジネスに示唆のある最先端の知見を持つ、最高の研究者をノンジャンルで集めた」という意味において、まさにドリームチームだ。だからこそ、ビジネスに携わるあらゆる人に、ぜひ読んでほしい1冊なのだ。

 繰り返しになるが、本書の最大の特徴は17人の大物学者の人選であり、その目利きである。この目利きを様々な領域を超えて行うことは、想像以上に難しい。しかも英語でこれら多様な大御所にそれぞれの専門的知見のインタビューをするわけだから、そのハードルの高さは皆さんも想像がつくだろう。そして私はまさに広野氏だからこそ、この仕事ができたと理解している(編集部注:入山氏が広野氏の目利きを信頼するに至った理由と経緯については、本稿では割愛した。ご興味のある方は、『世界最高峰の経営教室』を参照いただきたい)。

■ 17人のスター研究者の紹介・位置づけ

 さて、このように広野氏の目利きによる超豪華メンバーの知見がまとめられた本書だが、他方で、その領域は多岐にわたり、また各研究者に個性があるのも事実だ。

世界のスター研究者を入山流に整理

 そこでここからは、私・入山章栄の独断で、各研究者の研究領域(1)と、立ち位置(2)を整理させていただこう。各研究者に確認をとったわけではないし、もしかしたら私の整理に異論がある専門家もいるかもしれない。しかし、多くの読者が本書を読み進めていくうえでのガイダンスとして有用と考えるので、あえてこのような整理をする非礼をご容赦いただきたい。

(1) 研究領域による整理

 言うまでもなく、経営・ビジネスと関わりのある研究分野は、多様である。その代表は経営学かもしれないが、その中身も多様である。加えて、そもそもはより広範な「経済」を扱っていた経済学でも、近年はビジネスに示唆のある理論や研究成果が多く出てきている。マーケティングも同様だし、ファイナンス分野はそもそも経済学の影響が非常に色濃い。

 本書は、そのような「ビジネス、経営、ビジネス関連の経済学、マーケティング、ファイナンスなどに関する研究分野」の様々な領域全体から、できるだけ広範に、トップ研究者を選び抜いているのが特徴である。あえて本書における17人を領域別に分けると、以下のようになるはずだ。

[経営学] 経営者・リーダーの視点
マイケル・ポーター(CEO 論/米ハーバード大学)
ナラヤン・パント(リーダーシップの経営心理学/仏インシアード経営大学院)

[経営学] 戦略の視点
デビッド・ティース(ダイナミック・ケーパビリティ/米カリフォルニア大学バークレー校経営大学院)
チャールズ・オライリー(両利きの経営/米スタンフォード大学経営大学院)
ヘンリー・チェスブロウ(オープンイノベーション/米カリフォルニア大学バークレー校経営大学院)

[経営学] テクノロジーの視点
デビッド・ヨフィー(ネットワーク効果で読み解くプラットフォーマー/米ハーバード大学経営大学院)
マイケル・ウェイド(デジタルトランスフォーメーション(DX)/スイスIMD)
マイケル・クスマノ(日本のイノベーション力/米マサチューセッツ工科大学経営大学院)

[経営学] 新時代の経営への視点
ジャズジット・シン(社会的インパクト投資/仏インシアード経営大学院)
ヘンリー・ミンツバーグ(資本主義論/カナダ・マギル大学デソーテル経営大学院)

[経済学] 経済学からビジネスを解き明かす視点
スコット・コミナーズ(マーケットデザインで読み解く起業マネジメント/米ハーバード大学経営大学院)
スーザン・エイシー(AI とアルゴリズムの進化論/米スタンフォード大学経営大学院)

[マーケティング]
フィリップ・コトラー(ニューノーマルのマーケティング論/米ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院)
ドミニク・テュルパン(デジタルマーケティング/スイスIMD)

[ファイナンス]
ロバート・ポーゼン(ステークホルダー理論/米マサチューセッツ工科大学経営大学院)
コリン・メイヤー(パーパス経営/英オックスフォード大学サイード経営大学院)

[AI・機械学習]
マイケル・オズボーン(AI と雇用の未来/英オックスフォード大学)

 これだけを見ても、この本一冊でいかに多様な領域がカバーされており、いかに豪華メンバーであるかが分かるだろう。