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 早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授が「ビジネスに携わるあらゆる人に、ぜひ読んでほしい1冊」と推薦するのが、『世界最高峰の経営教室』。この本の巻頭に、入山教授が寄稿した「本書を読むにあたってのガイダンス」を、2回に分けて転載する。

 世界トップクラスの経営学者や経済学者17人の論考を「入山流」に解説する本稿は、単なる書籍の紹介ではない。入山教授を興奮させた「ビジネスに示唆のある世界最先端の知見」を俯瞰(ふかん)する。

 本書は、私の旧知の仕事仲間であり、最も信頼している経済ジャーナリストである日経ビジネス副編集長の広野彩子氏が、2019年春から約1年半、欧米のトップビジネススクールの教授を中心に、経営学や経済学における世界トップクラスの研究者に最新の知見を尋ねてきた取材成果をまとめたものだ。合計17人の研究者のビジネス、経営、経済、テクノロジーなどに関する最先端かつ骨太な知見がまとめられている。

■ なぜ本書を読むことに価値があるのか

 私はこの本をビジネスパーソンや研究者・学生など多くの方々に、ぜひ手にとってほしいと考えている。それはこの本がそれだけ希有な本であり、今後もこのような本が出る可能性は低いからだ。

 その最大の理由は、なんと言っても、本書に出てくる17人の世界的な経営学者・経済学者の豪華さだ。まさにドリームチーム! よくぞ、これだけのメンバーを集めたものだ。「世界最高峰」という書名に恥じない、現代の必読書ではないか―。本書の第一稿を読み、私が最初に抱いた率直な感想だ。

入山章栄(いりやま・あきえ)
早稲田大学大学院、早稲田大学ビジネススクール教授
慶応義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所で、主に自動車メーカー・国内外政府機関への調査・コンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院より博士号(Ph.D.)を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール、アシスタントプロフェッサー。13年より早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)准教授。19年より現職。「Strategic Management Journal」「Journal of International Business Studies」など国際的な主要経営学術誌に論文を多数発表。主な著書は『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)、『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』(日経BP)、『世界標準の経営理論』(ダイヤモンド社)。(写真:的野弘路)

「誰が本物か」が分かりにくい時代

 現代のビジネス環境は変化が激しく、またネットメディアなどを通じて様々な情報や視点・意見が行き交う。逆に言えば、その中で「本物の知見」だけを選んで、しかも経営学、経済学、ファイナンス、テクノロジーなど様々な領域を超えてその知を学んでいくことは至難の業だ。特に、アカデミア(学問の世界)と実務を往復している経営学者・経済学者は、一般のビジネスパーソンからは遠い存在にも感じられ、その知見を学んでみたいものの、誰が「本物」なのかは分かりにくい。

 加えて言えば、研究者が著した本で取り上げる内容は、多くの場合はその研究者の専門分野に限定される。それだけ深い知見は得られるが、ビジネスに必要な知見の全体像を、様々な領域をまたいで1冊で網羅するのは、かなり難しい。