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小田中:お二人が書かれた『感染症対人類の世界史』を読んで、一番、驚かされたのが、太平洋戦争を起点とするマラリアの流行でした。

 もちろん、大日本帝国の時代の日本には植民地があったわけで、台湾でのマラリアの感染拡大が、日本の内務省にとって非常に大きな問題だった、といった話は、研究者仲間などから聞いていました。しかし、太平戦争中の死者の多さや、日本に持ち込まれたときに実際に受けたダメージなどは、改めて振り返ると想像以上のものがあります。マラリアには、キニーネなどの薬も一定程度ありますが、今もアフリカ中心に多くの患者がいる感染症ですから、日本でこれから再び流行れば、大変なことになりかねないと思いました。

温帯地方の長き平穏の時代が、崩壊する

小田中:温暖化については、もうかなり長く世界で問題になっていて、それでも、ぼくらはなかなか止められない、という状況にあります。そのなかで、これまで比較的、平穏に暮らしてきた温帯地方に、熱帯・亜熱帯の感染症や、凍土から溶け出した感染症が出てくるとしたら、これまで通りの暮らしを続けるのは、難しくなります。

 そう考えると、どうしたって、将来に向けた対策を何か考えないといけない。

 これまで、気候変動について、ぼくらは対処療法的にやってきたけれど、抜本的にライフスタイルを変えなければならないところまで来ているのかもしれない。

 ぼくらは果たして、慣れ親しんだライフスタイルを変える必要があるのか。あるとすれば、どのような形に変えていけばいいのか。この点、どのように感じられますか。

増田:これはもう、私一人の力ではどうにもならない。と、私は思っているわけです。

 東京でも横浜でも埼玉でも、今、この瞬間もどんどん高層ビルが建っている。その時点で、ヒートアイランド化も温暖化も避けられないのは、目に見えて分かっているようなものではないですか。だから、私一人の力ではどうにもならない。

 高層ビルを建てるのではなくて、何かもうちょっと違う暮らし方、住み方、働き方ができるのではないかと思う一方で、そういうやり方でなければ経済は回らないと考える人たちも多くいて、この矛盾は何なのだろうと、日々、疑問に思いながら暮らしています。エアコンの使用を巡っても、これは困ったものだなと思うばかりです。

池上:増田さんの高層ビルの話は、都市への集中が大きな背景としてあって、特にコロナ前には、マンションブームや東京五輪を当てこんだ都心の地価高騰がありました。