増田:本にも書きましたが、2014年、代々木公園で蚊を媒介にデング熱にかかった人が多く出て、話題になりましたね。デング熱は本来、東南アジアやアフリカ、中南米など、熱帯・亜熱帯地域で流行る病気ですから、このところの地球温暖化と何らかの関係があるのかもしれません。
この先も温暖化が続くとすれば、日本でどのような病気が流行る可能性があるのかは、考えておく必要があるのではないでしょうか。
今こそ、マラリアに警戒せよ
池上:その意味で、これから心配なのは、マラリアですね。
小田中:ああ、確かに。
池上:太平洋戦争では、多くの日本人兵士が東南アジアでマラリアにかかり、亡くなっています。そして、戦後、復員という形で東南アジアから帰国した兵士たちを起点に、国内でマラリアの感染が拡大しました。
ですから、今、これだけ温暖化が進んでいるなかで、今後また、マラリアが広がるという可能性は否定できません。
何しろ、マラリアは今も世界中で多くの人間を殺しているのです。マラリアやデング熱の感染を媒介する蚊は、人間を最も多く殺している生物として知られます。そして2番目に殺しているのが、人間自身であるのも、ご存じの方が多いでしょう。
2016年には、ロシア・シベリアのヤマル半島で、炭疽病の集団発生があり、死者も出ました。その原因は、温暖化の影響で永久凍土が解け、そこから現れたトナカイの死骸に炭疽菌が残っていて、他の動物に感染し、人間にまで広がったからだと、言われています。
このように、永久凍土に閉じ込められていた過去の病原菌が姿を現し、人間が感染する事態は、これからも起きるかもしれません。
そう考えると、人間は今、地球の南と北の両方から、感染症が発生、拡大するリスクに直面しています。
新型コロナの感染拡大が始まって間もない、今年4月28日に刊行された、池上氏と増田氏の共著『感染症対人類の世界史』。いわゆる「コロナ関連本」のなかで、最速で刊行されたもののうちの1冊
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