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 30万人を突破した日本で学ぶ外国人留学生。アニメやマンガなど日本のポップカルチャーに関心を持ち、日本が大好きな人も多い。卒業後に日本企業で働くことを希望する留学生も多いが、就職活動がうまくいかなかったり、就職できたとしても短期間で辞めたりする場合が少なくない。

 そんな外国人留学生たちの実態に迫ったのが、新刊『日本を愛する外国人がなぜ日本企業で活躍できないのか? 外国人エリート留学生の知られざる本音』)だ。著者である九門大士氏は、東京大学公共政策大学院の外国人留学生向けの英語コースで教えており、亜細亜大学の教授として外国人留学生について研究を続けている。

 日本で学ぶ外国人のエリート留学生の知られざる本音、日本企業の外国人雇用の実態と、どんな課題があり、どのような変革が求められているのかについて九門氏に話を聞くシリーズの1回目。今回は日本で学ぶ外国人留学生の現状について聞いた。

(聞き手は山崎良兵=日経BP・クロスメディア編集部長)

九門 大士 (くもん・たかし)
亜細亜大学アジア研究所教授。東京大学公共政策大学院非常勤講師。東京大学公共政策大学院で外国人留学生向けに英語で「日本産業論」を教える。慶應義塾大学法学部卒、米ミシガン大学公共政策大学院修了。JETRO(日本貿易振興機構)にて中国・アジアにおける人材マネジメント・企業動向のリサーチなどを担当。中国・清華大学経済管理学院にて1年間の研修。2010年にグローバル人材育成を主業務として独立。東京大学工学部特任研究員などを経て、現職に就く。主な著書に『アジアで働く』(英治出版)、『中国進出企業の人材活用と人事戦略』(ジェトロ=共著)など

2020年までに30万人の留学生の受け入れを目指すという日本政府の目標は、2019年に31万人を突破し、前倒しで達成されました。最近は新型コロナウイルスの問題で日本に留学するハードルは高まっていますが、ひとまず目標を達成できた現状をどう見ていますか。

九門大士(以下、九門):30万人という難しい目標を達成できたのは素晴らしいことですが、卒業後も日本に残って働きたいという外国人留学生への対応は、まだまだ課題が残っています。留学生の多くは、日本が好きで、日本で働くことに強い関心を持っています。それでも日本で働けなかったり、働けたとしても、自分がなかなか組織の一員であると感じられなかったりするようなケースが目立ちます。

 このままでは日本に優秀な外国人材が来なくなる可能性を心配しています。2011年以降の増加の多くは、日本語学校や専門学校に通う学生で、大学院や大学に通う留学生の伸びは穏やかです。コロナ禍により、世界的に移動が制限されるようになっていますが、優秀な人材のグローバルな争奪戦は今後も続くでしょう。だからこそ自国にどうやって外国人留学生に来てもらうかは、日本にとって大事なテーマです。

 少子高齢化が進み、人口が減るので、その穴埋めとして日本人と同じような考え方をする外国人に来てほしいと考える傾向が国内では目立ちます。しかし日本人と同じような振る舞いを外国人に求めても仕方がないと私は考えています。

 同質化を求めるのではなく、むしろ日本人と異なる視点や才能を持つ外国人の特徴を活かして、「ダイバーシティ(多様性)」を加速させ、もっとイノベーションを生み出せるような社会を作っていくことが日本にとって大事です。

日本に強い関心を持ち、留学にまで踏み切る外国人は、日本の“ファン”と言えます。彼らの力を十分活かせていないなら、日本経済にとって大きな損失です。

九門:留学生の出身国を調べると、最近は先進国から新興国へと広がっている傾向が鮮明です。日本に関心を持って留学する人は着実に増えています。より多くの人が日本で学ぼうとしているのはグッドニュースです。

 だからこそ日本に関心を持っている優秀な人材をどうやって日本に引き留めて、一緒にビジネスをするのかがすごく大事になります。新型コロナウイルスの問題が長引くと、日本に優秀な人が来なくなるリスクがあります。日本に留学した後の出口の面でも、外国人材がより活躍できるような仕組みを整えることが欠かせません。

 ただ留学生の「出口」といえる日本での就職が難しい現状については危機感を持っています。全体の6割の留学生が日本での就職を希望しますが、その半分しか就職できないという現実があるからです。

 もちろん政府も外国人留学生が30万人になった後について、いろいろ考えていました。しかしながら、さまざまな省庁がバラバラに取り組んでおり、良い形を見出すのに悩んでいる印象があります。大学と企業の連携を見出すプロジェクトを始めるなど努力もしていますが……。