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PDCAを導入する企業で目立つのが数字の丸投げだ。「数字をぶつけて『やれよ』と圧力をかけるだけのPDCAが多くの企業の実態だ」とコンサルタント、稲田将人氏は指摘。悪循環を脱するヒントを含めて聞いた。

日本企業のPDCAについては特にどんな課題があると考えますか。

コンサルタントの稲田将人氏

稲田将人氏(以下、稲田氏):目立つのはやはり数字、施策、そして責任の「丸投げ」です。そのために現場に対しては、ただ結果ばかりを追い詰めるPDCAになっていることです。

 ある上場しているアパレル企業では販売促進や集客効果を上げるために、AIを使ったシステムを使おうという企画が浮上し、2000万円ほどの費用をかけることにしました。ところがデータと現場を見るとそもそも欠品が多発し、かつ現在のトレンドを取り入れた商品の品ぞろえが皆無に等しかったのです。

 要するに基本的なマーチャンダイジング(MD)がなっていなかったわけで、AI導入を検討する以前の当たり前のことがおろそかになっている状態なのです。売れる商品の企画がおろそかで売れるモノも欠品だらけなのに、AIというバズワードに乗って、海のものとも山のものともつかぬシステムを導入しようとしていたのです。

 経営にはマイナスからゼロの状態にもっていくための課題と、ゼロからプラスに向けるための課題とがあります。このアパレルは目の前のマイナス部分をほったらかしたまま魔法のようなプラスにかけようとしていたわけです。この会社は「現状把握」という概念がない状態で、正しいPDCAを回すために何を目指し、日々何を確認して追いかけるべきかをほったらかしにして、「青い鳥」を追い求めていたのです。こうした当たり前のPDCAを回すことを放棄している企業が多いことをまず、知ってほしいと思います。

PDCA自体について考え直すには、何から取り組むべきでしょうか。

稲田氏:いろいろなポイントがありますが、定型業務においては「業務定義」です。

 これは「事業の方向性に沿って、各主要部門で行うべき業務、課題への取り組みのガイドラインを明確に示すこと」です。角度を変えて言えば、その部門が回すPDCAとは何かを定め、担当業務において何を追いかけ「磨いて」いくのか、明らかにすることだとも言えます。

 もっと分かりやすく「これをやりなさい」「このデータをこの角度から見て、この問題を解決しなさい」ということを明確に伝えると言ってもいいでしょう。これが定型業務のPDCAのベースになるはずですが、日本企業では「業務定義」を放棄してしまっているケースが多いと思います。

 先ほどのアパレル企業のようなケースでも、現実には商品の欠品が読み取れる帳票の運用ができていないところがほとんどです。ちょっとした工夫を行えば欠品の発生は読めるのに、そこをマネジメント、マネジャーが明らかにしにいっていない。ここを「見える化」するだけで売上高が30%ほど上がる例はざらにあります。