ESG(環境・社会・企業統治)投資が会社と働く人の未来を激変させている。「企業の『働きがい』や『働きやすさ』に関するデータに投資家が大きな興味を持ち、人的資本への投資を促すようになっている」と言うのは、『ESG投資で激変! 2030年 会社員の未来』の著者で、元楽天(現・楽天グループ)IR部長の市川祐子氏だ。働く側も、若いときから仕事を任せてくれる成長企業に就職し、スタートアップへの転職を経て起業という未来図を描く人が増えているという。

 ESGが大きな価値観となる時代、これから10年のキャリア戦略をどう立てていくべきか。ESG投資と深い関わりのあるキーパーソンが自身の経験を通して、市川氏と語り合う。メルカリ会長の小泉文明氏との対談に続く本シリーズ第3回は、『FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』をはじめ数々のヒット書籍の翻訳を手がけ、ESGを重視するベンチャーキャピタルファンドを立ち上げた関美和氏が登場する。

関 美和(せき・みわ)
関 美和(せき・みわ)
翻訳家/ エムパワー・パートナーズ・ファンド ゼネラル・パートナー 慶応義塾大学文学部、法学部卒業。電通、スミス・バーニーを経て米ハーバード・ビジネス・スクールでMBA(経営学修士)を取得。米モルガン・スタンレー投資銀行を経て、米クレイ・フィンレイ投資顧問東京支店長。退職後『FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』(日経BP)など数々のヒット書籍の翻訳を手がける。ESGを重視するベンチャーキャピタルファンド「エムパワー・パートナーズ・ファンド」を設立。

「大企業で部長になる」未来が幸せと思えなかった

市川祐子さん(以下、市川):先日、多様な企業のIR(インベスター・リレーションズ/投資家向け広報)担当者たちが集まった席で、「関さんに憧れている」という人にたくさん出会いました。

関美和さん(以下、関):うれしいです。なんか、そんな。

市川:もちろん私もその一人です。なぜ、たくさんの人が関さんに憧れるんだろうと理由を考えてみたら、ビジネスの最先端や投資を経験されて、その後にビジネス書の翻訳家をされて、今度はESGに特化したベンチャーキャピタル(VC)ファンド、「MPower Partners Fund(エムパワー・パートナーズ・ファンド)」を仲間と立ち上げられた。まさにライフシフト的な生き方、働き方を実践されているからだというのが私の分析です。ご自身のキャリアについて、インタビューなどでは「成り行き任せ」とおっしゃっていますが……。

:いつも「成り行きです」とか、「ノープランでここまで来ました」という返答が多く、そっけなくて申し訳ないと思っていたので、今日は私の人生の転機や、後付けですけれど人生のテーマとかもしっかりお話しさせていただきます。

市川:うわ、ありがたいです! では、まずキャリアのスタートについて。大学を卒業後、新卒で電通に入られて、同期入社が男性100人以上に対し、女性10数人程度。「競争を勝ち抜いた自覚はあったものの、ここに一生いるのかな、という気持ちが最初からあった」そうですね。

:男女雇用機会均等法施行直後に入社した、いわゆる均等法第1世代でしたから、職場にロールモデルとなる方がいらっしゃらなかった。それに、自分がここですごく頑張って部長さんとかになりたいかなと考えると、それで自分が幸せでいる未来があまり想像できなかったんです。

 もともと給料がいい会社の上、年次で自動的に上がっていくし、電通という名刺もある。そうしたものをなかなか捨てられず、仕事にやりがいを感じているわけじゃないけれど40代、50代までなんとなく会社に居続ける方も結構いらっしゃるように見えて。当時、電通に限らず、多くの日本の大企業がそういう会社員を大量に生み出す仕組みになっていたと思います。

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