青野:そこからまた少し、お話を広げると、感謝の言葉というのは、受け取る側にしてみれば、誰にかけられたかで、うれしさが大きく変わることが、あると思うのです。「この人に感謝されるなんて、本当にうれしい!」と。それはやはり、尊敬している人、人格的に尊敬している人ですよね。

 感謝の言葉で貢献に目を向けてもらうとなれば、自分が発する感謝の言葉のエネルギーを最大化したい。となると、人徳が問われる。そうでないと、「ありがとう」と言ったところで、「おまえに言われたくないよ」と(苦笑)。

岸見:その通りですね(笑)。

その「ありがとう」に、下心はないか?

岸見:それもやはり、下心があると見抜かれてしまうとダメですね。下心が見抜かれるのは、親子関係でもよくあり、特に思春期の子どもは敏感に察します。

 今の社会では、昔のように、親がむやみに子どもを叱ることはなくなって、「ありがとう」と言うようにもなりました。そうすると、子どもが自分の期待する行動をとったときにしか「ありがとう」と言わない親も出てきます。すると、思春期の子どもは、この「ありがとう」には、下心があると敏感に感じ取ります。

 部下も一緒なのであって、社長が「ありがとう」と言うようになっても、そこに何か、自分たちを操作、支配しようとする意図があれば、若い人は特に、すぐ気づくと思います。

 だから、「叱る/ほめる」をやめて、貢献に着目して「ありがとう」を言うことが浸透すると、今度は、部下から「社長のその感謝の言葉は、うれしくないのだ」という声が上がるかもしれません。

 逆に言えば、そういうことを言えるような関係を築けることが大事です。そういう意味で、偉そうにしていない、何でも言えるリーダーだと、みんなに思ってもらう努力は要るのでしょう。それがきっと、青野さんが、以前におっしゃっていた、嫌われない勇気というか、嫌われない努力なのでしょう。

日経BPから『ほめるのをやめよう ― リーダーシップの誤解』を発売しました。

上司であることに自信がないあなただから、
よきリーダーになれる。そのために―

◎ 叱るのをやめよう
◎ ほめるのをやめよう
◎ 部下を勇気づけよう

『嫌われる勇気』の岸見一郎が放つ、脱カリスマのリーダーシップ論

ほぼ日社長・糸井重里氏、推薦。
「リーダー論でおちこみたくなかった。
おちこむ必要はなかったようだ」

●本文より―

◎ リーダーと部下は「対等」であり、リーダーは「力」で部下を率いるのではなく「言葉」によって協力関係を築くことを目指します。

◎ リーダーシップはリーダーと部下との対人関係として成立するのですから、天才であったりカリスマであったりすることは必要ではなく、むしろ民主的なリーダーシップには妨げになるといっていいくらいです。

◎ 率直に言って、民主的なリーダーになるためには時間と手間暇がかかります。しかし、努力は必ず報われます。

◎ 「悪い」リーダーは存在しません。部下との対人関係をどう築けばいいか知らない「下手な」リーダーがいるだけです。

◎ 自分は果たしてリーダーとして適格なのか、よきリーダーであるためにはどうすればいいかを考え抜くことが必要なのです。

● 現役経営者からの共感の声、続々!

サイボウズ社長・青野慶久氏
「多様性に対応できない昭和型リーダーシップに代わる答えが、ここにある。」

ユーグレナ社長・出雲充氏
「本書がコロナ禍の今、出版されたことには時代の必然がある」

面白法人カヤックCEO・柳澤大輔氏
「僕も起業家&経営者という職能を20年以上続けてきていますが、いわゆる起業家や経営者っぽくないと何度も言われてきました。自分自身、いわゆるリーダー体質じゃないなと思っていましたが、それは僕自身が知らず知らずにリーダーというものを過去の固定概念で捉えていたからのようです。リーダー像は多様化しており、時代とともに求められているリーダーの性質は変わり、もっといえば、誰でもなろうと思えばなれるし、一人ひとりがリーダーにならないとならないんだと思います。世の中をよりよくするために」

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